“認知症”行方不明 のべ1万9000人余 過去最多 備える工夫は?

2024年07月04日NHK


去年、認知症やその疑いがあり、行方不明になった人は、全国でのべ1万9000人余りと、これまでで最も多くなったことが警察庁のまとめでわかりました。500人以上が亡くなって発見されています。

備える工夫は?認知症と思われる人を見つけたら、どうすればいいのでしょうか?記事の後半でご紹介します。

10年で1.8倍近くに

警察庁によりますと、認知症やその疑いがあり、はいかいなどで行方不明になったとして、去年、届け出があったのは前の年よりも330人多いのべ1万9039人で、統計を取り始めた2012年以降もっとも多くなりました。

届け出のあった1万9039人のうち、95%に当たる1万8175人は去年のうちに所在が確認されましたが、502人は亡くなって見つかり、250人は去年のうちに発見されませんでした。

行方不明になる人の数は、10年前、2014年(10783人)の1.8倍近くに急増していて、各地の警察は、地域や行政と連携した取り組みを続けています。

家族や自治体が認知症の人の服や靴に取り付けたGPSの装置を活用して発見につなげたケースが去年71件あり、埼玉県で行方不明になった人を、300キロ余り離れた仙台市で保護したケースもあったということです。

高齢化が進む中、認知症で行方不明になる人の数は、今後さらに増加していくと見込まれていて、警察庁は、GPSやドローンなどの技術も活用しながら、早期発見と事故防止の取り組みを強化していくとしています。

備える工夫 いろいろ

高齢者などの行方がわからなくなった際、迅速な発見につなげるための取り組みが県内の自治体で進められています。

前橋市は行方不明のおそれがある高齢者などにGPS端末を貸し出す事業も行っています。

「高齢で認知症のある方になると、手に何も持たないで外出してしまう場合もあるので、GPSを持ち歩く手段がないこともあります。ですから、こういった靴を使って履いて出かけていただくのが確実というか」

このGPS端末はベルトポーチやコインケースなどに入れて、体に身につけることもできるほか、専用の靴の中にも装着することができます。

月額1000円で貸し出していて、家族などがコールセンターに問い合わせると、その位置情報が確認でき、早期発見につながることが期待されています。

このGPS端末は事業を始めた8年前からこれまでに344台貸し出されていて、身につけて外出し、行方がわからなくなった人のうち7割以上が1時間以内に保護されたということです。

キーホルダーには7桁の番号

また、認知症などで自分の名前や住所などが伝えられない人のために「見守りキーホルダー」を無料で提供する取り組みを3年前から始めています。

キーホルダーには7桁の登録番号が書かれていて、行方不明になって発見された際に、警察や市役所の担当者が事前に登録された番号と照合し、人物の確認ができる仕組みになっています。

前橋市長寿包括ケア課の担当者「GPSを利用することで、市外にいた高齢者を保護した事例もある。家族や支援者の負担の軽減にもつながるので活用してほしい」と話していました。

見つけたら、読み込んで知らせて

福井市は、行方不明になった認知症の人をスムーズに保護できるように、QRコードが記載されたシールを活用して、家族に連絡できる仕組みを導入しました。
このシールは縦2.5センチ、横5センチの大きさで、QRコードが記載されています。

認知症の人が行方不明になった場合に備えて、服やバッグ、つえなどに貼り付けて使用します。

見つけた人が、このQRコードをスマートフォンで読み取ると、発見された人の性別や身体的な特徴のほか、行方が分からなくなった日時や場所などの情報が表示されます。

現在の居場所や健康状態などを入力して送信すると、家族にメールで知らせる仕組みになっていて、スムーズな保護につながることが期待されています。対象は福井市に住む人で、市役所や地域包括支援センターなどで無料で登録を受け付けています。

福井市は「積極的に登録してほしいです。QRコードをつけている人を見かけたら、手助けをお願いしたいです」としています。

福井県内では福井市のほかに9つの市と町でもこの通知の仕組みを導入しているということです。