新しい見守り“デジタル近居”実現へ テレビで会話を楽しむ「ちかく」 体と心の確認が可能な距離感の提案

2024年05月15日FNNプライムオンライン


“デジタル近居”を実現する高齢者の見守りサービス「ちかく」は、テレビに接続された端末を通じて、家族がスマホアプリで高齢者の安全を遠隔から確認できるサービスで、専門家は、高齢者と心を通わせる技術の重要性を強調する。

ほどよい見守り“デジタル近居”実現 

家族とのコミュニケーションも楽しい、新しい高齢者の見守りサービスとは。
都内に住む寒竹容子さんが、遠隔で祖父とつながる様子を取材した。

孫・寒竹容子さん:つながった。ちょっと待ってね。

スマホ越しに映っているのは、福岡・北九州市で1人暮らしをする、祖父の佐藤弘さん(90)。

祖父・佐藤弘さん:紗梛ちゃん?

ひ孫・紗梛さん:何?

彼女が利用しているのは、高齢者向けテクノロジーのスタートアップが開発し、14日から販売される「ちかく」という見守りサービス。

「ちかく」の特徴は、SIM内蔵の専用端末を高齢者側のテレビと電源コンセントにつなげるだけで、Wi-Fi設定やインターネット工事は不要という点だ。

端末のカメラが、部屋に人がいるかどうかを判断し、“見守る側”は、スマホのアプリで高齢者側の在宅を知ることができる。
そしてワンタッチで、テレビ電話に通じる。

祖父・佐藤弘さん:
孫やひ孫が同じ屋根の下でおるような感じです。言葉だけじゃなく表情も読める、テレビで話ができると。

在宅時に最も過ごす部屋に置かれたテレビを利用することで、高齢者側にとっては、ほぼ等身大の表情でやりとりができ、見守る側にとっては、高齢者の起床や、睡眠時間などの生活リズムを把握することが可能になる。

孫・寒竹容子さん:
じいちゃんのことが大好きだし心配なのに、何もしてない自分がちょっと罪悪感みたいなのがあったが、それがすごく減りました。

2040年には、1人暮らしの高齢者世帯が約900万世帯にのぼるとの試算がある中、デジタル技術を用いた、新たな家族との距離感の提案“デジタル近居”というコンセプト。

チカク・梶原健司代表:
それぞれに生活があったり、住み慣れた家があったり。デジタルの力を使い、お互い無理のない形で近居というのが、物理的なところではなく、離れていても近居みたいな、そういったことが実現できれば、今家族が抱えている課題が結構解決できる。

デジタルで「さりげない見守り」を

「Live News α」では、暮らしを変えるテクノロジーにくわしいIoT NEWS代表・小泉耕二さんに話を聞いた。

堤キャスター:
── 今回のケース、小泉さんはどうご覧になりますか?

IoT NEWS代表・小泉耕二さん:
65歳以上の人口は、すでに3割近くにのぼっていて、離れて暮らす親が心配だったり、一緒にいたいという気持ちはあっても、同居するのが現実的に難しい場合があります。

そういったケースで活躍するのが、今回の「ちかく」のような”デジタル近居”が実現できるサービスです。
このサービスでは、テレビという使い慣れた家電を通して、両親や祖父母とコミュニケーションを取ることができます。

堤キャスター:
── 家族にとっては、こうしたサービスがあると、安心につながったりしますよね?

IoT NEWS代表・小泉耕二さん:
高齢者の安否確認をデジタルで解決しようとすると、まず思いつくのがセンサーやカメラを家に設置して、状況を遠くからでも見ようとすることですが、「見られている」感じがすることからか、実は、こういったデジタルツールは敬遠される場合が多いです。

そこで、「見られている」と感じさせない安否確認として、テレビのリモコンを操作すると、ちゃんと電池が使われたことを家族に発信する「見守り電池」というものもあります。

ほかには、室内に設置されたセンサーや、プライバシーに配慮したAI(人工知能)カメラによる、骨格検知で転倒を認識するようなAI見守りなど、日常の中でさりげなく様子をうかがうソリューションが登場しています。

ただ、こういったもので、体の状況確認はできますが、人は心と体でできているので、心の状態も重要です。実はこれについても、最新のデジタル技術で新しい可能性を開くことができると思います。

遠距離でも「心を通わせる」ケア

堤キャスター:
── 具体的には、どういったことができるんでしょうか?

IoT NEWS代表・小泉耕二さん:
対話型AIに祖父母や両親の状況を聞くと、見守りのために取得していた映像を解析して、最近の状況を教えてくれ、連絡を取るきっかけができます。

また、テレビの大型・高画質化、通信技術の進化により、遠隔地でも、すぐそばにいるような映像と音声でコミュニケーションが取れるので、遠くの両親に小さい孫の面倒を見てもらうことも可能になります。

本当は近くに住みたいけど、事情があって住めない方でも、心を通わせることができるソリューションが、今後もっと出てくることを期待します。

堤キャスター:
大切に思っているからこそ心配してしまうわけですが、家族がどこまで生活に関わるのかは難しいところです。
プライバシーへの配慮はもちろん、気軽さというのもまたカギになってくるのかもしれません。