介護業界の人手不足 ICTを活用して解消へ…「日本介護福祉士会」が先端機器の理解を深めるオンライン研修を初開催
2024年02月26日読売新聞
全国組織の「日本介護福祉士会」(東京)が、介護業界の深刻な人手不足を解決するため、介護職員が情報通信技術(ICT)やロボットなどの先端技術を学ぶ研修事業を始めた。同会が主体的に取り組むことで、導入に向けた地ならしが各地で進むと期待される。
業務改善に期待
「このモニターで、入所者の心拍などを確認できます」「機器を活用すれば、2人分の仕事を1人でできるようになります」
昨年11月下旬、同会がICTをめぐるオンライン研修を初開催し、全国の介護職員約40人が参加した。受講者は動画で、高齢者施設で使うセンサーや見守りカメラの操作方法、利便性を学んだ。視聴前には、少人数のグループに分かれ、現場の業務改善の必要性などを話し合い、理解を深めた。
同会には全国の介護福祉士約3万9000人が加入している。現場でリーダー役を担う介護福祉士が先端技術への理解を深めておくべきだとして、厚生労働省の補助で統一的な研修が企画された。
同会によると、受講者は3か月程度で計16時間の講義を受ける。職場で介護ロボットやICT機器を導入する際に求められる知識や技術、職場環境について考える課題にも取り組む。同会がカリキュラムを作成しており、全課程を終えた受講者には修了証を交付する。
2025年には団塊の世代が後期高齢者となる。高齢者数がほぼピークとなる40年度には、約69万人の介護職が不足すると見込まれる。厚労省の雇用動向調査によると、22年に介護職として働き始めた人数は、離職者数を下回っている。
研修は、介護福祉士の資格がない職員でも、現場経験が3年以上あれば受講できる。同会の及川ゆりこ会長は「業務の改善が図られるよう後押ししたい」と語り、DX(デジタル・トランスフォーメーション)化を進める考えを強調した。
手書きにファクス
将来的に急激な人口増が見込めない現状では、介護業界にはICTの導入などによる「業務の効率化」が必須とされる。しかし、その導入をめぐっては施設間で格差がある。
公益財団法人「介護労働安定センター」(東京)が22年度に行った調査によると、パソコンやタブレット端末などを導入していない施設は全体の19・3%。半数近くの施設が「導入コストが高い」と、訴えていた。厚労省によると、利用者の記録をいまだに手書きで文書化し、ファクスでやりとりする施設も多いという。
政府はICT機器などの導入費を補助しており、24年度当初予算案にも事業費97億円を計上した。厚労省は、「業務の効率化を進めて介護職員の負担を軽くする。浮いた時間を介護業務にあてれば、サービスの質の向上につながる」と、期待している。