電力データ・Wi-Fiで単身居住者の異常を察知!ビーマップが提供する超高齢社会に適した見守りサービスの魅力とは

2024年02月15日ガジェット通信


無線LAN・交通・流通・通信・カメラ監視等のインフラ構築を行っている株式会社ビーマップは、一人暮らしの方の健康・生活を見守る3つの「見守りサービス」を、2024年春からサービス開始予定。

今回、ビーマップの担当者の方にインタビューし、サービスの詳細や今後の展開などを伺いました。

高齢の一人暮らし世帯の増加と見守りサービス

令和5年版の高齢社会白書によると、65歳以上の一人暮らしは男女共に増加傾向にあるそう。

昭和55(1980)年の65歳以上の一人暮らしの数は男性約19万人・女性約69万人・65歳以上人口に占める割合は約8%だったものの、令和2(2020)年には男性約231万人・女性約441万人・65歳以上人口に占める割合も約19%と倍以上に増えており、今後もさらに増加傾向になると予想されています。

また、高齢になると人との交流が減少してしまうことから部屋へ閉じこもり状態にもなりがちに。

一人暮らしの方の場合、体調が悪くなっても近くに相談出来る人がいないことも多く、誰にも気付かれず自宅で倒れそのまま息を引き取ってしまい、長い期間気付かれずに遺体で発見されるという悲しい事件も社会問題として取り上げられています。

65歳以上が入居可能な賃貸物件は全体の約5%程しかなく、賃貸物件の大家さんの約8割が「高齢者の入居について拒否感がある」と回答したデータも出ているのだとか。

特に70歳以上の高齢者は審査が厳しくなる傾向があるそうです。

そこで徐々に広まりつつあるのが「見守りサービス」。定期的に訪問を行ったり、電話・カメラなどを活用し、こういった不幸な事故を防いでくれることが期待され、徐々に浸透しつつある中、こうした問題に対応するべく、ビーマップでは従来のものとは異なった3つの見守りサービスを順次展開中。

今回、その見守りサービスについて詳しくお話を伺いました。

電力データを活用!工事不要な見守りサービス

ビーマップが展開する見守りサービスの1つ目は「電力データ」を活用したもの。

電力データとはスマートメーターによって取得される「電気をどの時間にどのくらい使用したかが分かる、個人の電力使用量等のデータ」のことで、既に約7000万件に設置済みのほか、東電エリアでは100%の設置率となり、2024年度までに全国で100%にするべく設置が進められています。

2020年6月に電気事業法の法改正が行われ、電気事業者以外の事業者も含め、契約者本人の同意を得た場合に第三者が電力データの活用が可能となっているのだそうで、一般社団法人電力データ管理協会と呼ばれる認定協会も設置され、第三者に対する使用許諾などを行っているそう。

この電力データを活用した見守りサービスのメリットについて、ビーマップ 執行役員 事業推進本部 ソリューション事業部 事業部長の白井利顕さんに聞くと、
「この電力データを活用することのメリットは大きく分けて3つあります。1つ目が、電力データ管理協会が経済産業大臣の認定を受けているため安心・安全・正確であるという点。2点目は、東京をはじめ沖縄までの電力会社10社が入られてるので、日本を横断して使用することが出来る点。3つ目はコストの低さです。」
と説明してくれました。

経済産業大臣によって認定された一般社団法人電力データ管理協会を通じたデータ取得を行うため、データが正確かつ安全であるだけでなく、スマートメーターが設置されていれば活用することが出来るため、“特別な機材の設置や通信環境の整備は一切不要”。

工事等も不要なことから、ビーマップでは1戸につき月額数百円程度(見守りサービス提供会社や代理店への提供価格)という驚きの価格でサービスを提供することが出来るのだとか。

このサービスでは、普段の生活とは異なる電力使用が起きていないか、データの解析結果をAIが判定。普通とは異なった電力が使用されている「異常データ」を検出・察知します。

例えば、“過去1ヶ月間は夜間の電気使用が一切なかった”のにも関わらず「3日間ずっと電気が点けっぱなし」というデータを「これはおかしい」とAIが検出・異常として判定するという仕組み。

そして異常が検出されると、事前に登録していた家族や管理会社へアラートとして通知し、駆け付け対応等の必要な処置を行うことが出来るものとなっています。

ビーマップでは現地周辺をよく知っている方々との協業が望ましいと考えたそうで、現在は発行部数が少なくなりリソースに余裕が出ている新聞配達会社や置き薬の会社など、街を頻繁に移動している企業に声をかけ、見守りサービスの現地確認人員として提携を進め、駆けつけ依頼を迅速にすることが出来るネットワークを構築中だそうです。

ビーマップ執行役員 事業推進本部 インテグレーション部 部長の馬谷聡さんは、本サービスの今後の展望について、

「まずは電力データのスマートメーターからスタート致しますが、ガスや水道のメーターもスマートメーター化されている最中なので、宅内に何もデバイスがない状態でデータの活用が出来るようにしていきたいですね。」
と語ってくれました。

ベッドデバイス・Wi-Fiでも見守りサービスを提供

また、ビーマップでは株式会社フォーエヴァーと業務提携を行い、ベッドの脚下に厚み8mmの小さなセンサー機器を1つ敷くだけで、心拍数・呼吸数・離床状態・睡眠状態などのバイタルデータを計測することが可能な見守りサービスも提供中。

この画面右側の板をベッドの足の下に敷くだけでこれらのデータを計測出来てしまうというのですから驚きです。

白井さんに実物を見せてもらうと、ベッドの足元に置いてあっても全く邪魔にならないサイズ感。

Wi-Fi環境がある場所で使用でき、データを吸い上げて専用のクラウドシステムにデータが集まり、家族や介護スタッフなどがデータを閲覧することが可能となっています。

「実は最近、夜中に心拍が上がっていることから病院で検査を受け、治療をしていたんです。その際に病院の検査キットで出たデータと同じような計測結果が、この見守りサービスから出たんです。」

と、病院の検査キットと似たデータが検出されたという驚きのエピソードも披露。

もちろん、この見守り診断では保証される様なデータは取れないとしつつも、異常発見のための初期診療には最適だと自信を覗かせていました。現在は介護住宅や老人ホームなどを中心に展開を行っているそうです。

料金はサービス利用・機器レンタル費用込みで5,000円/月・戸以下の金額で、見守りサービス提供会社や代理店へ展開しています。

また、3つ目として「Wi-Fiの電波のゆらぎ」を用いた見守りサービスも提供中。

なんとWi-Fiの電波の中を人や動物が歩いた際の“電波のゆらぎ”を計測し、居室内で生物が行動しているかどうかが分かるのだそう。これには「Wi-Fiセンシング」という技術が活用されているのだと説明してくれました。

「Wi-Fiセンシング」は、IEEE(電気・情報工学分野の学術研究団体、技術標準化機関)が2025年3月に「IEEE 802.11bf」としてWi-Fi(無線LAN)の電波状況から人間や動物などの行動を取得する、Wi-Fiの規格に盛り込まれる予定となっている新しい技術。

このWi-Fiセンシングで取得した行動データをAI(人工知能)と組み合わせることで、様々なサービスで利用出来ると期待されています。

これまでもWi-Fi機器や電波によって位置を測定する規格はあったものの、Wi-FiルーターとWi-Fiで通信しているスマートフォンなどのデバイスが必要でした。

それに対し、Wi-FiセンシングはWi-Fiの子機を必要としないため、高齢者や子供・ペットなどの行動監視にも活用しやすい技術となっています。

「Wi-Fiの電波は水によって減衰します。つまり、人や動物の体に当たると減衰するんです。さらに発信した電波と折り返して戻った電波を計測することで、(電波の)出入りの差分をAIで計測し、人や動物が動いていたり“そこにいる”ということが判定出来てしまうんです。」
と馬谷さんが説明してくれました。

人なのか、動物なのかといった細かな判定は難しいものの、例えば自宅を留守にした際のペットの見守りサービスなどへ活用が出来ると語り、「動物、特に犬や猫などは基本的にじっとしていないものですよね。そこで一定周期でペットが行動した際のゆらぎを観測されると“ペットが無事”、という風にペットの見守りサービスとして活用出来ます。また、泥棒が入ると本来いないはずの居室にゆらぎが出るわけですから、旅行などで長期不在時の防犯対策としても活用出来ます。」
と馬谷さんはコメント。

「例えばペットカメラなどは、どうしても撮影されているエリアだけしか判定が出来ませんよね。しかし電波は結構広い範囲を飛びます。その広い範囲全体の揺らぎを検知することが出来るので、これ1つで小さめの家なら全体をカバー出来てしまうんです。」

と説明。ホームセキュリティから見守りまで、幅広く活用可能なサービスなのだと教えてくれました。

ビーマップが考える見守りは、スマートメーターのデータのみで見守る「バリュー版」と、上述したWi-Fiセンシング技術などを活用し、宅内にセンサーなどを設置して提供する「プレミアム版」の2種類を検討しているそう。

プレミアム版で使用するWi-Fiセンシングサービスでは「在・不在の状況を把握出来る」ことによって、これを電力データの「教師データ」として利用し、AIモデルの再学習に活用することでバリュー版のサービス向上に利用出来るため、サービスが普及する程に精度・品質が向上していく点がメリットの1つ。

また、Wi-FiセンシングはWi-Fi子機を必要としないため、高齢者向けの見守りだけではなく「ペットの見守り」「防犯対策」などの用途にも利用が可能。さらにセキュリティカメラではカバーしきれない広範囲の見守りが出来ることもメリットとなると説明してくれました。

今後ビーマップでは、高齢者にとって一番なじみのあるコミュニケーション手段が音声であることから、“AIスピーカーを活用したサービス”も検討しているそう。

「残念ながら現在のAIスピーカーは流暢に会話をすることが出来ないため、ChatGPTなどの大規模言語モデル(LLM)を使用し、ストレスがないAIスピーカーとの会話を実現していきたいと考えています。

AIスピーカーやIoT機器は製品ベンダー毎に規格がバラバラのため、それらを統一する規格としてCSA(旧称ZigBee Alliance)が企画する“matter”というスマートホームの標準規格がありますので、それを活用してソリューションを構築していきたい。」
と今後の展望を語ってくれました。

ビーマップが提供する「見守りサービス」は、超高齢社会で起きる「居室で気づかれずに亡くなってしまう」「介護現場での人員不足」といった様々な課題に対してアプローチ出来るサービス。

ビーマップの見守りサービスを導入することで、高齢者一人世帯の入居拒否といった課題の解決にも繋がっていくのではないかと、ビーマップの方々も期待を込めて展開するサービスとなっています。