着るだけで健康状態を分析「着衣型ウェアラブル」 西陣織で培った技と情報技術を融合 糸が紡いだ縁で福島から発信
2024年01月14日FNNプライムオンライン
国の伝統工芸品、京都の西陣織。 この伝統の産業と現代の情報技術を融合させるプロジェクトが、福島県川俣町で進んでいる。この2つを結び付けたのは、運命の「糸」だった。
西陣織を製造する工場
福島県川俣町にある「ミツフジ福島工場」は、京都の伝統「西陣織」の工場として昭和31年に創業したミツフジが6年前に稼働させた。
そんな「繊維のエキスパート」が川俣町で作っているのが、着衣型ウェアラブル。
着るだけで健康状態を分析
ウェアラブルは、身につけられる小型の端末・電子機器のことで、最近ではスマートウォッチの普及で馴染みがある方も多いかもしれない。
ミツフジ福島工場が開発したのは「着衣型ウェアラブル」というもので、心拍データから「ストレス」や「眠気」などの健康状態を分析できる、まさに「着るお医者さん」だ。
エキスパートが作る特殊な糸
なぜ、こんなことができるのか?ミツフジが作った特殊な糸にあった。三寺歩社長は「私たちが開発している銀メッキ繊維。細い1本1本の糸に銀でコーティングをしている」と話し、ナイロンを銀でコーティングした「金属の糸」を数十本縒り合わせているという。
心臓の鼓動で発せられる電気信号を、この金属の糸がキャッチ。脈が速いと「緊張している状態」。脈がゆっくりだと「リラックス状態」にあることが把握できる。実際に、高齢者などの体調の異変を察知するため病院や介護施設から購入の実績があるという。長年にわたって培ってきた繊維技術で開発した「銀のコーティング」は、洗濯してもはがれない。
一連のシステムも構築
IT企業での勤務経験をもつ社長のもと、アプリなどで健康状態を確認できる一連のシステムを作り上げた。三寺社長は「着るだけで体調が分かるとか、その人の健康の役に立てる。高齢者の方のお困りごとや赤ちゃんの見守り、そういう課題の解決に役に立てる製品を作りたい」と話す。
糸が紡いだ縁 福島から挑戦
ところで、なぜ福島県川俣で新たな挑戦が始まったのか?三寺社長は「同じ業界の方と一緒に、新しい挑戦をしたいという思いがあった」と語る。「運命の赤い糸」を感じたのが、川俣町の伝統繊維「川俣シルク」
繊維産業に関わってきた地元の人を雇用し、東日本大震災からの復興を応援できるのではないかと考え拠点を構えた。製品開発のために、約700人の町民が実証試験に参加するなど町も全面協力している。
三寺社長は「この川俣から世界に挑戦する。福島の発展に役立つ挑戦をしていきたいと思っています」と話す。
糸が繋いだ「伝統」と「革新」…福島から、世界を変える技術の発信が期待されている。
(福島テレビ)