賃貸入居の高齢者、電力データで見守り 東電系など
2024年01月04日日経新聞
東京電力パワーグリッド(PG)など電力大手3社とNTTデータが出資するGDBL(東京・千代田)は、今春にも電力データによる高齢者の見守りサービスを事業化する。単身の65歳以上の人口は増えているが、賃貸住居の契約に苦労するケースがある。電気の使用データの分析で孤独死のリスクを減らし、高齢者に安心して住まいを貸し出せる環境を整える。
65歳以上の単身の生活者は2020年で約700万人にのぼる。過去10年間で約1.5倍になり、今後20年間で200万人ほど増える見通しだ。だが孤独死を恐れ、不動産の所有者が貸し出しを敬遠する傾向もある。
GDBLは賃貸住宅の仲介業者や所有者を対象に、入居者の見守り事業を始める。電気の使用量を独自のアルゴリズムで分析。異常があると入居者への電話や管理者への通知で安否を確かめ、孤独死の防止につなげる。
電力計から1〜2日前の使用量を分析する。センサーやカメラの見守りに比べると、即効性で劣るが、入居者の同意があればすぐに導入できる。家に機器を置く必要がなく、入居者のプライバシーも尊重できる。
高齢者の賃貸仲介を手掛けるR65(東京・杉並)と提携した。23年12月から検証を始め、早ければ今春に事業化する。割安な郊外の物件でも、家賃の数%で収まる水準での提供をめざす。
孤独死は発見が遅れると、原状回復などで平均40万円ほどかかるという。特殊な清掃が必要になった場合、告知義務のある「事故物件」になり、物件価値が平均で2割ほど下がる。
電力データの民間利用は23年10月に全面解禁された。三菱商事と中部電力などが高齢者の見守り事業を始めた。不動産業界は少子化で空室対策がより大きな課題となり、単身の高齢者を受け入れやすくするサービスの需要が高まっている。