限界集落で起きた「孤独焼死」 まちが始めた高齢者のスマート見守り

2023年12月19日朝日新聞


 中山間地の「限界集落」に暮らす高齢者の生活を見守るため、高知県仁淀川町が新たな取り組みを12月から始めた。仁淀川町では2年前に民家が全焼しながら半日ほど誰も気づかずに住民が亡くなる「孤独焼死」が発生。高齢者の見守りが課題となっていた。

 電力会社が検針を自動化するために各家庭に設置を進めている「電力スマートメーター」(SM)を活用。内蔵された通信装置を介して、緊急時には町役場や消防に自動で連絡が届く仕組みだ。

 仁淀川町は10月、四国電力送配電(高松市)と協力して役場から20キロ以上離れた別枝上区の18世帯に無線通信端末を設置。火災警報器と水道メーターを接続した。

 12月以降は、火災警報器が作動した場合や、水を出しっぱなしにするなど通常とは違う水道の使い方が確認されたときに、SMの通信機能を介して町役場と消防にメールが送信されるという。

 町は実証実験という位置づけで、3年ほど運用状況を調査する。

 別枝上区では2021年2月、木造住宅が全焼して87歳の男性が死亡する火災があった。火災は夕方5時に発生したが、翌朝10時ごろまで誰も気がつかなかったという。

 町企画振興課の川村強係長は「高齢者だけで暮らす集落では緊急時の対応が難しい場合がある」と指摘する。

 町によると、町内157地区のうち約6割は、別枝上区と同様に高齢者が点在して暮らす「限界集落」という。実証実験の結果次第では、他の地域でも導入できるか検討する。

 四国電力送配電ではSMの通信機能を使ったビジネス展開を進めており、見守りサービスへの活用もその一つ。担当者は「山間部の過疎化は四国で大きな課題になっている。遠隔で見守りができれば地域の負担軽減にもつながる」と話している。

 仁淀川町は高知県中部に位置する山あいの町。面積は333平方キロで、人口は4665人(12月1日現在)。