医療や見守りサービス 高齢化と過疎化進む中、情報通信技術を活用し地域課題克服へ 岩手県八幡平市

2023年10月17日テレビ岩手


高齢化と過疎化が進む八幡平市で、情報通信技術を活用したオンライン診療や見守りサービスを推し進めようというシンポジウムが開かれました。岩手県の典型的な地域課題を先端技術で克服しようという試みを遠藤記者が取材しました。

人口減少と高齢化と言った地域課題を克服し、経済発展も遂げようという内閣府のソサエティ5.0。

八幡平市は、2021年にオンライン診療の推進とお年寄りの見守りをDX・デジタル技術による変革で実現し、持続可能な地域社会を作ろうという構想で内閣府の採択を受けました。

八幡平市・佐々木孝弘市長
「(八幡平市は)2021年度に内閣府からソサエティ5.0タイプの地方創生推進交付金に新規採択された全国でも5事例の一つの事例となっております」

八幡平市では、市内大更にある八幡平市立病院と、田山診療所を結んでオンライン診療が行われています。

これを実際に行っているのは、八幡平市立病院の望月泉統括院長です。望月医師は県立中央病院の院長を定年退職したあと、八幡平市に招かれました。

八幡平市立病院・望月泉統括院長
「田山診療所から大更の市立病院まで40キロ離れていて、大体片道1時間近くかかりますので、往復2時間、結構大変です。高齢者が多いと耳が遠い、なかなかうまく話ができない。基本「D to P with N」医師と患者に看護師を交えた診療」

9月4日には、患者の自宅に看護師が出向いてオンライン診療が行われました。

望月統括院長
「特に体の調子は変わりはないですか」

看護師
「変わりないです」

望月統括院長
「そうですか。どうもどうも。お薬は毎日ちゃんと飲んでいますか」
看護師
「はい飲んでいます」

望月統括院長
「血圧の状況は非常にいいと思いますので、このままのお薬でいいと思いますよ」

オンライン診療で大きな役割を果たしているのが「HACHI」です。HACHIはアップルウオッチを使って、万が一の際の緊急情報や日々の健康情報を送る仕組みで、八幡平市に本社がある「AP TECH社」が開発しました。元々は大西一朗代表取締役が自分の両親の見守りのために作ったものです。

大西代表取締役
「東京で働いていたんですけど、両親が滝沢市で老々介護していまして、毎日電話をしたり安否を確認していたんですが、アナログで両親も年を取ってくると電話には出てくれないし、電話が鳴ってもNHKの連続テレビ小説をボリューム90で聞いているので、電話の音なんか聞こえなかったりするんですね」

八幡平市田山で夫と二人で暮らす山本幸子さんは、HACHIをインストールしたスマートウオッチを常に着けて、滝沢市に住む息子のお嫁さんと青森県三沢市の娘さんに見守ってもらっています。

山本幸子さん
「迷惑をかけたくないんです。子どもたちに。自分のことは自分でと思っているんですが、おかげさまで安心。家族全員安心していると思うんです」

また、9月のシンポジウムでは、ドローンやAI技術を活用して高齢化社会を豊かにしようと先進的な取り組みをしている長野県伊那市の担当者もゲストとして招かれました。

長野県伊那市・安江耀さん
「下の台に吊り下げているのは80キロのおコメを運んでいる。200キロまで運べるようになっている。200キロ運べば人も運べる」

八幡平市でも9月4日に望月医師が処方した薬に見立てたものをドローンで患者の自宅に届ける実証実験が行われました。

ドローンピーク・石川啓代表
「(体が不自由な人は)ご家族にも負担をかけたくない気持ちがある。そういった方々に自宅で診療を受けられる、薬が自宅に届くというのは非常にこの先も自分が住み慣れた土地に住み続けられる希望になる」

グーグル・クラウド・ジャパンの上野由美執行役員は、日本は情報の収集や活用が先進国の中で際立って遅れていて、その原因が、役所のサイロ化、部署毎に孤立していて情報共有が進まないことを挙げていました。

八幡平市立病院・望月泉統括院長
「例えば災害時なんかはなかなか医療情報がわからないんですね。病院ごとによって違ってますから。それが一目で、例えばマイナンバーカードでもいいんですが、共通のものを利用して情報がつかめるようになれば、非常に災害時なんかも有用だと思います」

過疎化と高齢化というこれまでマイナスに見られがちだった地域課題を逆手にとって、新たな産業振興、地域創生に活かそうという八幡平市の取り組みは、まだ始まったばかりです。