奈良・川上村、高齢者の見守り機能付きカード実証実験

2023年10月13日日経新聞


奈良県川上村は、見守り機能が付いたプリペイド型カードの実証実験を始めた。金融機関の利用が難しい山間部に住む高齢者にキャッシュレス決済を広げると同時に、遠方にいる家族らに日常的な見守り手段を提供する。南都銀行、フィンテックスタートアップのKAERU(東京・中央)と共同で実施する。

実証実験では、金融機関の口座と連携したプリペイド型の「KAERUカード」を50人程度に配布。毎月定額を自動入金する方式で、村内の移動スーパーや診療所、タクシーで利用できる。離れて暮らす家族などはスマートフォンのアプリを通じて、決済通知や利用履歴を確認できる。実証の期間は2024年5月末までで、課題を検証したうえで村での本格導入を検討する。

川上村役場で記者会見した栗山忠昭村長は「街に住む子どもが、親の生活を見れるようになることで、川上村に住み続けても安心だと思ってもらえるのでは」と期待した。南都銀行の橋本隆史頭取は「中山間部での暮らしのDX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組み。利便性を向上させることが実証できれば、移住・定住の促進や地域の活性化にもつながる」と説明。実証実験を通じ、キャッシュレス化による支店業務の変化などを調査する。

KAERUは認知症の人など向けに決済サービスを展開している。過疎地域での事業で自治体と組むのは初めて。南都銀行は傘下のファンドを通じて22年にKAERUに出資した。キャッシュレスの取り組みを進めている川上村のニーズを把握し、両社が連携協力を申し出た。