孤独死も…「見守り」「つながり」が課題 多くが高齢者「災害公営住宅」の実情 千曲川堤防決壊4年
2023年10月13日FNNプライムオンライン
台風19号の大雨で長野市の千曲川の堤防が決壊してからきょう13日で4年です。被災地の大きな課題となってきたのがコミュニティーの再生です。多くの高齢者が暮らす「災害公営住宅」では住民間の「つながり」に加え、「見守り」も課題となっています。
長野市豊野町の美濃和田団地。かつての団地は台風で被災し、建物は取り壊され、その後、被災者向けの「災害公営住宅」として整備されました。
土屋周さん(83):
「掃除はしていないんだけど、ごめんなさいね」
入居者の一人、土屋周さん83歳。荷物の配達の仕事を長く続け、定年後は夫婦2人暮らしでしたが、2019年の夏、妻・峰子さんを亡くしました。
四十九日の法要を済ませた直後の10月、台風災害に遭い自宅を失いました。
その後、仮設住宅や親戚が管理するアパートで暮らし、2年前、ここに引っ越してきました。1DKの部屋で1人暮らしが続いています。
土屋周さん(83):
「(住んでみていかがですか?)あまり、横のつながりはないから寂しいね。話し相手がいないってことだね」
友人とたまに会ったりするそうですが、部屋で過ごすことが多いと言います。
土屋周さん(83):
「みじめだ。まさかこんなふうになるなんてね、思わなかった」
2021年完成した災害公営住宅美濃和田団地。今年5月から一般市民の入居も始まっていますが、現在入居する68世帯のうち65世帯は被災者です。
そして、入居者の半数以上は65歳以上の高齢者が占めています。
今年6月、悲しい出来事がありました。1人暮らしをしていた80代の男性が自室で亡くなっているのが見つかったのです。
異変に気付いたのは見守り活動をしていたボランティアでしたが、「孤独死」を防ぐことができませんでした。
市は関係機関と協力し見守り活動を続けるとしています。
長野市・荻原健司市長:
「お一人でお住まいの方に対する配慮というか、健康や安全の確認というものをしっかり続けていきたいと思っています」
トランプやおしゃべりに興じるお年寄りたち。こちらは、団地内の集会所。毎週火曜、住民が集まる「サロン」が開催されています。
長野市豊野支所・山田智己支所長補佐:
「入居されている皆さんもいろいろなところからこちらの団地にお住まいになられていますので、そういう中でコミュニティーを形成していく上でこういう場が必要ではないかと」
土屋さんも参加―。
土屋周さん(83):
「(こういう場所があるのはどうですか?)いいんじゃない。みんなストレスたまってるからね」
翌週のサロンでは清泉女学院大学の教員と学生がボランティアで訪問。参加者は楽しみながら歩行改善の運動などに取り組んでいました。
80代:
「家族1人いるけど、勤めているから昼間は1人。だから火曜日のこれが楽しみでね、楽しみで来ます」
「お友達と会い、お話しできる良いチャンス。火曜日はこちらへ伺うようにしている」
「皆さんの顔を見て、ニコニコできること感謝。『きょうも元気で来たの、良かったね』というこの会話から始まる」
入居者からも好評のサロン。
しかし、今後、運営方法が変わる見込みです。昨年度までは国の補助金を活用した被災者の生活に寄り添う「生活支援・地域ささえあいセンター」が運営していましたが、補助金が終了し、見直しを迫られました。
今年度からは支所や社会福祉協議会など5団体が週替わりで支援し、開催されています。
市は、今後、住民主体の運営に変えたい考えですが、入居者の多くが高齢であることから継続させるには新たな仕組みが必要となっています。
長野市・荻原健司市長:
「ご高齢でいろんな困難なケースも出てくると思いますので、そこに対しても行政側もどんな取り組みができるかというのを、保健センターや包括支援センターを含めて考えていきたいと思います」
被災者に安心して暮らしてもらうために整備された災害公営住宅。模索が続いています。