孤独死防げ…アプリで手軽、見守りサービス

2023年09月28日産経新聞


孤独死や遺体の長期未発見を防ごうと、手軽な見守りサービスの活用が広がっている。システムが定期的に送る安否確認のメッセージに反応がなければアラートが異変を知らせるなど、高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けられるほか、別居する家族の心理的な負担軽減も期待される。こうしたサービス導入に行政も動き出した。

団地の高齢者で

40年前の昭和58年に入居が始まり、多摩ニュータウンの一画にある団地「グリーンメゾン鶴牧3」(東京都多摩市)。

住民の4割が65歳以上と高齢化が進み、孤立化が懸念される中、同団地の管理組合は約3年前、孤独死を防ぐために活動するNPO法人「エンリッチ」(東京)が提供するLINE(ライン)を使った見守りサービスを導入した。

単身者10人を含む高齢者約30人で作ったライングループに、システムから3日に1度、安否確認のメッセージが届き、各自がOKボタンを押す。23時間以内に反応がない人がいればアラートが知らせ、担当のメンバーが確認する。

サービス導入に伴い、防災連絡やメンバー間で顔見知りになるための集会開催など、地域の新たなつながりづくりにも役立っているという。同組合の吉岡賢さん(88)は「誰かが見守ってくれているという安心感が可視化される。安心して住み続けるには、自分らで工夫せざるを得ない」と話す。

身寄りがない人も

少子高齢化や核家族化で一人暮らしの65歳以上は増加の一途をたどる。国勢調査によると、昭和55年に約88万世帯だった単身高齢者は令和2年に約672万世帯と、40年間で7倍超に増えた。単身世帯の約3割が65歳以上で、高齢者の約5人に1人が独居だった。

エンリッチによると、このサービスは現在、町会や集合住宅など延べ366グループの1016人が利用する。サービスを開発したエンリッチの紺野功代表(63)によると、身寄りがない独居の高齢者の孤独死などの懸念に対する受け皿にもなっているという。

介護者負担軽減にも

同社ではほかにも、個人情報が必要なく、ラインを通じて管理者が個人や複数人の安否を一括で確認できるシステムを行政向けに提供している。

高齢者の孤独や孤立を防ぐため、千葉県我孫子市は3月、エンリッチと孤独死防止に関する協定書を締結。行政向けのサービスの導入を決定した。市担当者は「支援につながる人は氷山の一角。孤独・孤立の解消は一つの仕組みでは難しいが、多様な社会支援があることで網羅的に見守れる」と強調。家族間などでサービスが広がることも期待する。

北海道栗山町の社会福祉協議会も今年からケアラー支援としてサービスを導入しており、紺野代表は「サービスがプラスアルファの安心感や訪問を負担に感じる人の対応、介護関係者の負担軽減など隙間を埋める役割を担ってほしい」とした。


孤立した高齢者が自宅で人知れず死亡し、死後に発見される孤独死が深刻化する中、近年、スマートフォンの孤独死防止アプリが登場している。

使わなくなったスマホなどを活用するアプリ「みまもりLite(ライト)」は、室内に置いたスマホの内蔵カメラで動体感知した1日分のデータが家族に毎晩メールで届くなど操作が苦手な高齢者でも利用できる。ソフトバンクも離れて暮らす親をアプリで見守れるサービスを提供。見守り対象者がスマホのロック解除や充電をした履歴などをアプリ上で確認できる。

若年層向けの孤独死防止アプリ「リンクプラス」では、スマホのタッチ操作を感知し、一定時間操作していない場合に外部にメッセージや位置情報が送信されるなど、高齢者に限らず幅広い年代の孤独死対策が進む。