電力スマートメーターで高齢者見守り 四国電力が高知で実証実験
2023年08月28日朝日新聞
水道メーターなどを使って過疎地に暮らす高齢者の生活を見守るサービスの実証実験を、高知県仁淀川町が今秋から始める。
水道の使用量データを計測し、異常が見られた場合は自動的に町役場などに連絡が届いて対応する仕組み。
同町では2年前に民家が全焼しながら半日ほど誰も気づかずに住民が亡くなる「孤独焼死」が起きており、点在して暮らす高齢者の見守り強化が課題となっていた。
実証実験は四国電力送配電の電力スマートメーター(SM)を活用する。SMは検針自動化のために通信機能を持たせた計測機器で、四国4県では今年度末までに全世帯に設置する予定。
同社ではSMの通信機能を活用して新たなビジネスへの展開を進めており、見守りサービスへの活用は今回が初めてという。
対象は、仁淀川町別枝上区(べっしかみく)の18世帯。自宅に設置されている水道メーターと火災警報器に、それぞれ無線通信端末を接続。各世帯に取り付けているSMを介して、同社のシステムにデータを送信する。
同町の計画では、水道メーターからのデータは1日2回集計し、水を出しっぱなしにするなど通常とは違う使い方が確認された場合、町役場や消防などにメールで知らせる。火災警報器が作動すると、すぐに連絡がいくため、通報がなくても消防が火災を覚知できるという。
同地区では2021年2月9日、木造住宅が全焼して87歳の男性が死亡する火災があった。火災は午後5時に発生したが、近隣に人家はなく誰も気がつかなかった。
翌朝10時ごろ家の前を通りかかった女性が焼け落ちた民家を見つけて119番通報。焼け跡から遺体が見つかったという。
「高齢者だけで暮らす住宅が山間部には数多く点在しており、人の目だけでは緊急時の対応が難しい」と町企画振興課の川村強係長は指摘する。
町は今回の実証実験に必要な水道メーターの購入費など約725万円を6月補正予算に計上した。1~3年ほどの実験をへて、他の地域にも拡大するか検討する。
四国電力送配電DX推進グループの大村真也さんは「山間部の過疎化は四国で大きな課題になっている。遠隔で見守りができれば地域の負担軽減にもつながる」と話している。