ミリ波レーダーで睡眠や心拍数をモニタリング 寝室見守りデバイス「ポム」のすごいところ

2023年08月14日ITmedia


 米国サンフランシスコのITベンチャー、Tellusとソースネクストが協業し、世界に先駆けて日本で展開することとなった非接触型の寝室見守りデバイス「POM」(ポム)。ミリ波レーダーで寝ている人の睡眠習慣や心拍数までもモニタリングできるという、この製品に見守られてみました。

 POMの特徴は、主に以下の3つです。

非接触型なので設置・運用が簡単
非接触型なのに睡眠状態だけでなく心拍数まで分かる
データの蓄積から、専用アプリで変化に気づくことができる

 8月7日から「Makuake」にて先行販売を開始しており、まだまだ期限を残して、すでに応援の目標金額を達成しています。

 では、このPOMのどこに期待が集まっているのでしょうか。POMがターゲットとするのは、1人で暮らしている(寝ている)高齢者の見守りです。そこに特化したために実現できたことにPOMのすごさがあります。

 これまで高齢者の見守りといえば、カメラ型、センサー型、通報ボタン型のようなものがありました。カメラ型はプライバシーの問題で嫌がる人も多い、センサー型は設置が意外と大変。通報ボタン型は寝ているときの異常に対応できませんし、身につけていないといけません。

 これらと比較するとPOMは非接触型で寝室に設置することとなっているので、1日に1回は必ず時間を過ごし、しかも長時間過ごすことになる寝室をモニタリングできます。非接触型ながら、モニタリングを実現できているのは、ミリ波レーダーを採用しているためです。

 ミリ波レーダーといえば、それが使われている代表的なものは自動運転的なものを実現している自動車です。自動車であれば周囲の状況を把握するために使われているミリ波レーダーを寝室で寝ている人に使ったのが、このPOMなのです。

 そして、ミリ波レーダーを採用することで、睡眠中の動きを検出することが可能になり、同時に独自のアルゴリズムにより心拍数や呼吸数までモニタリング可能になりました。なお、POMの精度については、心電図との比較で平均絶対誤差率は6.36%というデータもTellusは公開しています。そして心拍数のような小さい動きだけではなく、睡眠中の身体の動きという大きな動きも検出できるのも、やはりミリ波レーダーのおかげなわけです。

 POMがこれまでB2Bの分野で実績を積んできたのが、ホテルや病院、介護施設などであることからも、それは納得できるのではないかと思います。

 では、POMはカメラで人を見ているわけではないのに、なぜ人と認識できるのか。それはミリ波レーダーで対象物を検出する際、身体のサイズも見ることで、人と認識しているのだそうです。だから、例えば猫といっしょに寝ていても、人のモニタリングだけできるというわけです。

 つまり1人暮らしをしている高齢者と家族が、心理的にも安心して、異常に気づくことができることができるのがPOMなのです。なお、POMの名前は、Peace of Mindに由来しています。また、POMが取得しているデータはレーダー情報のみで、プライバシー情報はなく検出もしません。

 POMから取得したレーダー情報はアプリ上で活用され、人が見て理解できる形になります。そして、長期にデータを取得すればするほど、毎日の習慣、そこからの異常値などを検出することができるようになります。さらに、何か最近行動に変化が出ているとか、睡眠の状態が変化してきているなどといったことが分かるようになるわけです。もちろんデータはリアルタイムで検出しているので、異常値があれば通知を出すこともできます。

 POM本体のデザインは「無印良品」などの製品デザインも手掛けてきた鈴木元氏の手によるもの。寝室という身体を休めるための部屋にマッチする周囲に溶け込むデザインとなっています。最初ミリ波レーダーを採用しているということで、大きな筐体を想像していましたが、手のひらサイズほどの大きさになっています。そして、設置は寝ているところが見える壁に貼り、USBケーブルで電源供給をするだけです。

 筆者は実際に自分がPOMでどう検出されるのかを体験してきました。少し分かりにくいとは思いますが、PC画面の真ん中に座っている私が表示されています。目の前にPOMがあるだけなのに、PC画面に自分らしき姿が投影されているのは、少し不思議な感覚でした。私が動けば、これも当然のように画面上の姿も変化していきます。もちろん、これはデモ用の用意された画面なので、製品版でこの画面が見れるわけではありません。

 POMの設計思想は、「1人になっても住み慣れた町で老後を過ごしたい」「できるだけ自宅で過ごしたい」という当たり前の願いをサポートしたいという創業者の2人の考えからスタートしています。

 そして、POMが日本で事業をソースネクストと展開するのは、すでに人口の3割が65歳以上となっていることと関係があります。ソースネクストが販売目標を2029年年度末までに100万台と設定しているのも、この日本の人口の状態と関係性があります。

 正直、私個人としても、こういった高齢者に寄り添うハードウェアとサービスは他人事ではないなと感じました。自分の親がいつPOMを必要とするか分かりませんし、自分もお世話になる可能性も高いわけですから。

 さて、最後にもう1つ。今回、見守りIoTなどの製品とあまりなじみのないソースネクストがこのPOMを手がけたもう1つの理由をお伝えしておきたいと思います。Tellusの投資家でありメンターがEvernoteの元CEOで知られるフィル・リービン氏です。そして、日本でEvernoteと長く協力関係にあったのがソースネクスト。つまり、Tellusとソースネクストをつなぐ縁はEvernoteから始まっているのでした。