見守り介護ロボ老人ホームで実証実験 入居者を混乱させない技術備える…ソニーG開発
2023年07月24日読売新聞
ソニーグループ(東京都港区)が、介護施設向けのロボット開発を進めている。多忙な職員に代わり、入居者とコミュニケーションを図りつつ、見守る機能の確立を目指す。子どものような親しみやすい容姿と、認知症のケア技術を取り入れた独特な動きが特徴で、介護施設での実証実験でも入居者の反応は上々という。
「おばあちゃん、おっはよー。今から行くよ」。先月2日、特別養護老人ホーム「よみうりランド花ハウス」(川崎市)1階の共有スペースで、高さ83センチのロボットが88歳の女性入居者の正面から、かわいい声で話しかけた。時折、大きな目をぱちくりさせつつ、首をかしげた。
登場したのは開発中の見守りロボット「HANAMOFLOR(ハナモフロル)」だ。「はなちゃんと呼んでね」。前もって組み込まれたプログラムどおり、女性の左隣までゆっくり移動し、再び声をかけた。
孫が祖母に甘えるように、ロボットは女性と視線を合わせ、「『きらきら星』を歌いましょう」と誘った。女性も一緒に歌を口ずさんだ後、「上手だね。かわいいわ」と笑った。
同社で開発を担当する袖山慶直さん(43)によると、このロボットの特徴は、高齢者に少しずつ近づいて声をかけたり、視線が合ってから会話を進めたりする動きだ。フランス発祥の介護技術「ユマニチュード」の手法で、高齢者を驚かせたり、混乱させたりしない効果がある。
開発にあたり、袖山さんらは同施設で職員の日常を分析。職員が入居者の個室内でトイレ介助などを行う際、共有スペースで過ごす多くの入居者の見守りが手薄になることが分かった。
入居者によっては職員の姿が見えなくなると、落ち着きを失い、怒り出す。職員が手薄な時間帯をロボットで補うには、まず入居者に受け入れてもらう必要がある。そのため、同社はこの介護技術の導入を決めた。
実験後、同施設の介護福祉士の北谷和紀さん(37)は「入居者が生き生きとしている」と話した。橋本政彦施設長は「職員にとって、見守りが手薄な時に助けてくれる『相棒』のような存在になってほしい」と、期待を述べた。
このロボットは現在、体温計測などもできるが、プログラムに沿った動きにとどまる。同社は今後、人工知能(AI)や顔認証システムを導入し、入居者を1人ずつ判別し、自然な会話ができるようにしたいという。袖山さんは「多くの高齢者に喜んでもらえるロボットにしたい」と語っている。