大家7割が拒否感…どうする高齢者への住居“貸し渋り” 英は週1000円~見守りサービスも 求められる社会全体の取り組み

2023年07月08日FNNプライムオンライン


1人暮らしの高齢者が増える中、住居を借りたいけど借りられない“貸し渋り”が問題になっている。

大家の7割が高齢者に拒否感…4社に1社が高齢者入居できる賃貸“全くない”

3日、厚労相・国交省・法務省が集まり合同で行なわれた検討会で、住居を貸す大家など賃貸人の意識調査の結果が発表された。それによると、高齢者に対して約7割の大家が拒否感を持っているという。

その理由の多くが「家賃の支払い」や「居室内、自宅での死亡事故など」に対する不安だという。

65歳以上を専門に不動産仲介を行なっている「R65不動産」が3日に発表した調査結果によると、65歳以上の4人に1人以上が、現在の収入には関係なく「年齢を理由とした入居拒否」を経験。不動産会社の4社に1社が、高齢者の入居可能な賃貸住宅は「全くない」と回答しているのだ。

大阪の総合福祉施設で、高齢者の住宅支援を行なっている大阪・とりかい白鷺園の百武(ひゃくたけ)昭彦施設長によると、相談に来る人は増えていて、その多くは年金暮らしだったり、身寄りがなく生活に困窮している人だったりするという。

家を借りられずにいる、高齢夫妻の生活を取材した。

働き続ける74歳 夢は“夫婦だけの家を借りること”

大木清さん(74)と、妻・あけみさん(73)。
住み込みで働いていた居酒屋がコロナの影響で閉店し、取り壊すことになったため、突然住む場所を失った。

大木清さん:
(家を)出て行ってくれ、という感じになったんですね。家内は足が悪いので行くところもない。うろたえましたね。

妻・あけみさん:
(不安で)ご飯も食べられなくて、寝られなかった。

清さんは、お金は「全然何もなかった。(貯金は)ゼロです」と明かす。
身寄りはなく、2人は2022年3月から支援団体のサポートを受け、シェアハウスで暮らしている。

大木清さん:
(生活費は)10万円くらいで抑えないと、なかなか難しいんじゃないですかね。やっぱり飲食が一番ぜいたく品じゃないですか。“これ買いたい”というものがあっても、なかなか…ぜいたくは絶対できない。

夫の清さんは、シェアハウスでの生活から抜け出そうと、74歳の今も働いている。

大木清さん:
一生懸命、保険とかそういうものをバンバンかけていたら良かったやろうに。いかにお金が大切かというのがね。めちゃくちゃ反省ですね。

大木さん夫婦は、できるだけ長く働いて、夫婦で暮らせる自分たちの家を借りることが目標だという。

進む高齢化 “貸す側”へもサポート必要

急に、住む場所が失われるかもしれないという恐怖感は計り知れない。
しかし、2025年には団塊世代のすべてが後期高齢者になるなど、今後日本でより高齢化が進んでいくのは明白だ。住居に悩む高齢者は今後も増加傾向になるとみられる。

この状況を打破するためには、今後どのようなサポートが必要になるのだろうか。
3日の検討会では、住居を必要としている高齢者に住まいを確保しやすくする対策や、入居後の生活支援、そして大家などが安心して貸せる環境整備のあり方について、今後検討していかなければいけないという案も出された。

この案にもあるように、大家・貸す側へのサポートも合わせて行なわないと、現状を変えることはできない。
高齢者の住宅支援を行なっている百武さんも、「大家もトラブルがあっては経営が出来なくなってしまう。高齢者に物件を貸すことに、安心感を与えていくことが一番大切」としている。

海外に学ぶ!高齢者向け集合住宅 週1000円~で見守りサービスも

そんな中、取材班が注目したのは、海外の高齢者向け集合住宅だ。

イギリスでは、60歳以上から入居できる「シェルタードハウジング」という高齢者住宅がある。この住宅は、地方自治体と慈善団体により運営されていて、公営住宅を活用することなどにより、家賃が低く押さえられている。

例えばイングランド中部・ウェストノーサンプトンシャー州の住宅だと、広さなどにより価格が異なるが、1番低いクラスで週1000円(5.64ポンド)、1番高いクラスでも週3000円程度(17.99ポンド)。

さらに見守りサービスなども行われているので、安心・安全な生活を過ごせるようになっている。

日本でも、大家の貸し渋りが減るのを待つのではなく、増加する空き家を活用するなど、公的なサポートも必要になってくるだろう。
人ごとではない…当事者意識持ち社会全体で解決を+
元外交官の宮家邦彦氏は、「人ごとではない、ただ、大家さんの気持ちもわからなくはない。安心して暮らすためには、最後も、介護も含めて、社会全体がしっかりしていかないと。大家さんと借りる人だけの問題ではない」と話した。
日本でも民間レベルでは、高齢者と若者が一緒に入居し、若者が家賃を安く抑える代わりに、高齢者の生活をサポートをするサービスを始めたアパートもあるという。

高齢者は今後も確実に増えていく。社会全体で取り組んでいかなければならない問題だ。