小型ロボが高齢者見守り 呉・安芸灘諸島で実証実験

2023年05月24日中國新聞


 1人暮らしの高齢者の見守り支援や生活習慣の改善に、小型のコミュニケーションロボットを活用できるかどうかを探る実証実験が、広島県呉市の安芸灘諸島で進んでいる。薬の服用時間になると話しかけて知らせたり、遠方の家族や介護職員とメッセージをやりとりしたりする機能がある。介護職員の負担増加が課題となる中、市と市社会福祉協議会が2月に始めた。市によると、コミュニケーションロボットを使った見守りに関する実証実験は県内で初という。

 「お薬は飲まれましたか」。上蒲刈島(蒲刈町)で1人で暮らす名田敬子さん(88)は、ロボットに語りかけられるとほほ笑んだ。「目がかわいらしく、愛着が湧いてきた」。2月に届いたロボットに「まめた」と名付けてかわいがっている。「誰かと会話しているような感じで楽しい。薬を飲むのを忘れずにすむので助かる」と語る。

 ロボットは、ユカイ工学(東京)が開発した「BOCCO emo(ボッコ エモ)」。高さ約14センチ、重さ約400グラムで雪だるまのような姿をしている。通信機能があり、ネット環境が整備されていなくても使用できる。

 起床時間や薬の服用時間になると利用者に話しかける設定をしたり、遠方にいる家族や介護職員とアプリを通じてメッセージを音声でやりとりできたりする機能がある。センサーで部屋の温度や湿度などを測定。人の動きを感知、記録することで孤独死を防ぐ役割も期待される。

 2月から安芸灘諸島の上蒲刈島と豊島で、名田さんを含め単身生活を送る5人の協力を受け、試験的に運用している。

 市社協によると、利用者と家族へのアンケートで「癒やしになる」「安心感や見守られ感があり孤独の解消につながる」などの声があったという。一方で、ネットワークの接続が不安定なときがあるなどの課題も指摘された。

 市などは7月まで実験する予定で、協力者の意見をもとに今後の運用の在り方を検討する。