「ワタミ高齢者見守りサービス」が好評 AIやカメラに頼っていない
2023年02月23日ITmediaビジネスONLINE
高齢者を狙った特殊詐欺事件には胸が痛む。だますことは「相手を信用する」という人間関係の前提を崩すことだ。信用で成り立つ世の中が壊れ始めており、「人間の劣化」を強く感じざるを得ない。
そうした中で、ひとり暮らしの高齢者を対象にした「ワタミの宅食みまもりサービス」に力を入れている。今月上旬、和歌山県の営業所で、私も配達スタッフとして実際にみまもりサービスを体験してきた。
高齢のひとり暮らしの女性にお弁当をお届けした際、「体調はお変わりありませんか」「変な電話とか、何か変わったことはないですか」などと質問し、その回答を入力する。変わりない姿の写真も撮影して、離れて暮らす娘さんの専用アプリに、その情報を送信した。実際に会って、親の様子を報告してくれるというのは、離れて暮らす子供にとって、大きな価値となる時代だ。
現在でも、ワタミの宅食では、お弁当をお届けした際、年間なんと400件も高齢者の体調急変を発見して、命を救っている。見守りといっても、機械やカメラに頼るわけではない。実際に会って、声をかけて、顔色を見てというところに人間同士の心のつながりや、あったかさがある。これこそ、ワタミがやるべき仕事だという思いを強くした。
みまもりサービスは昨秋の開始以来、好評のお声を頂き、契約者が着々と増えている。親孝行なお子さんたちが日本にはそれだけ多いということだ。このサービスを通じて、特殊詐欺や孤独死を撲滅したいと考えている。
さて、注目されていた日銀の総裁人事は、経済学者の植田和男氏に決まった。注目すべきは、最有力といわれ続けた雨宮正佳副総裁が固辞したことだ。当コラムで何度も述べた通り、私は参院議員時代、日銀に対して金融緩和政策からの出口戦略について問い続けた。
黒田東彦総裁は、出口戦略は「時期尚早」と繰り返したまま、退任する。黒田総裁の下で異次元緩和を支えた雨宮氏が総裁を受けなかったのは、もはや出口に導く方法がないからだろう。日銀が債務超過に陥れば、円は信用を失うだろう。日本の財政破綻はいよいよ現実味を帯びてきたといえる。
円が信用を失ってハイパーインフレになれば、最も被害を受けるのは高齢者だ。物価が高騰しても、年金の支給額は上がらず、生活はいっぺんに苦しくなる。介護施設の入所費用が払えなくなり、出ていかなければならない悲劇も起こるだろう。そうならないために、次の日銀総裁に課せられた責任は極めて重い。
バラマキ政治や、借金依存の国家経営は、いつか必ず破綻する。それでも政治家はいまなお、大衆迎合や問題先送りで支持を集めようとする。この国をしっかり「見守る」という役目は、結局は国民ひとりひとりの意識になる。 (ワタミ代表取締役会長兼社長)