孤立死を避ける準備は必要…1人でも安心して暮らせる「見守りサービス」5つ

2023年02月05日日刊ゲンダイ

 

 南海、オリックス、ダイエーで活躍した門田博光さん(享年74)の死去に接し二度驚いたのは、兵庫県内の自宅で亡くなっているところを身内ではなく、病院からの連絡を受けた警察官に発見されたこと。1人暮らしは、いざとなった時の緊急対応が不十分なのがネック。他の人たちはどんな方法を取り入れているのか。

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 街中でバッタリ倒れるのはまだマシ。誰かが「119番」通報してくれるだろう。一方、自宅にいる場合は少々厄介なことになる。

 65歳以上の1人暮らしの人で自宅で急性死や事故で亡くなった人の数は東京23区だけでも3936人(2019年)。「後は野となれ山となれ」という人もいるだろうが、1人暮らしならある程度の準備は必要。発見がもう少し早ければ助かった命もあったはずだ。

「あいさつや声かけ、日頃の近所付き合いを通して見守り活動を行っています」
 こう話すのは、石川啄木が青春期を過ごした岩手県盛岡市の社会福祉協議会の担当者。同市には1人暮らしのお年寄りを地域で見守る「シルバーメイト」というサポート制度がある。

「夜、家に明かりがついていなかったら、『おばあちゃん、どうしているんだろう?』とメイトさん(見守りボランティア)に気にかけてもらう。市内32カ所にある地区福祉推進会が窓口になり、昨年3月末時点で対象のシルバー785人に対し、1050人ものメイトさんにご協力いただいております」(盛岡市社会福祉協議会の担当者)

 地域のみんなでお年寄りを見守ろうという取り組みだ。

 こうした見守りサービスには大きく5つのタイプがある。まずは盛岡市のシルバーメイトを代表とする「訪問型」、宅配業者や新聞配達などと提携した「宅配型」、異常を察知した場合に家族に通知する「電話・メール型」、行動を遠隔地から把握する「センサー・カメラ型」、そして高齢者自らも行動する「自発型」だ。

■朝に「黄色いハンカチ」を掲げる

 自発型で有名なのは、福井県若狭町で行われている「黄色いハンカチ運動」だ。朝、家の玄関先に黄色のハンカチを掲げ、それを夕方に片づけることで安否が周囲に伝わるという寸法。

 12年前にはじまり、当時、大いに話題になったものだ。

「持田地区の老人クラブのメンバーを中心とした『見回り隊』が高齢独居者宅を回り、ハンカチの状態を見て安否確認するというシステムでした。今でもハンカチ運動は続いていますが、数年前に代表者が亡くなってしまい、見回り隊は民生委員にお願いしております」(若狭町社会福祉協議会)

 ここにも高齢化や過疎化の波はひたひたと押し寄せているようだ。団地でもこのハンカチと似たような事例があるが、東京や神奈川、大阪のような近所付き合いの希薄な都会では成立しづらい。 そこで活用を考えたいのが、民間企業が行っている見守りサービス(別表)。独居高齢者の増加を背景に大手が続々と参入しており、離れて暮らす家族が申し込むケースもある。そのいくつかを紹介してみよう。

■郵便局員さんが訪問して茶飲み話

①「郵便局のみまもりサービス」(月額2500円)

 郵便局社員が月に1回、自宅を訪問して30分ほど話し相手になる。その際、「最近、よく眠れていますか?」「不審な業者からの電話や訪問がありましたか?」などの質問をしつつ、認知症などの健康状態もチェック。その様子を離れて暮らす家族などに報告してくれる。緊急性には乏しいが、「悩みの相談など話し相手になってくれて楽しい」(利用者)と好評だ。

②「東京ガス もしものたより」(月額990円)

 自宅で頻繁に開け閉めするドアにセンサーを設置。24時間開閉がないと、まず東京ガスから電話が行き、応答がない場合は家族などにメールでお知らせが届く仕組み。料金も手ごろで安否確認の入門編としては便利だ。

③「東北電力 よりそう見守りでんきゅう」(月額638円)

 電球の点灯、消灯の情報を離れた家族がスマートフォンで確認できるシステム。点灯時刻の履歴を見ることもでき、異常時には通知をしてくれる機能もある。

「リビングや玄関、トイレなどにSIM内蔵のLED電球を取り付けます。例えば、お風呂に電球を付けた場合、点灯しっぱなしなら危険だというふうにご活用できると思います」(東北電力・お客さまセンター)

 現在、よりそう見守りでんきゅうのサービスはNTTリゾナントが担当。仲のいい友人同士で電球を付け合うのもいい。

④「ソフトバンク・ワイモバイルのみまもりサービス」(月額528円) 

一定時間スマホの利用がなかった場合(時間は各自で設定)、まずは自動で本人に電話。電話に出ないと、見守る側にメールやアプリ通知がくるという仕組みとなる。

⑤「UR 見守りサービス」(月額990円)

 UR賃貸に住む人が利用でき、室内に設置したセンサーが行動を確認する。午前4時から11時までの7時間のうち、6.5時間動きがないと本人に電話。出ないと、緊急連絡先(3人まで登録可)に電話連絡がくる。

⑥「毎日、電話する」(無料)

 最後は最もおすすめな方法。気の置けない友人らと毎日、連絡を取り合うのが最大の安否確認になる。かけ放題プランなら電話代のコストもかさまず、何より楽しい会話で孤立することがない。

 前出の盛岡市社会福祉協議会の担当者が最後にこう結ぶ。

「昔のように近所付き合いが盛んなら、黙っていても周辺の住民たちが1人暮らしの人を気遣ってくれます。多く作り過ぎたカレーや煮物など、よく近所の人に配っていたものですよね」