高齢者施設の転倒事故防げ!入居者見守るAIシステム グローリー開発 骨格画像から判断、職員に通知へ

2023年01月10日神戸新聞

 

 貨幣処理機大手のグローリー(兵庫県姫路市)は10日、人の骨格から正確に姿勢を捉えるAI(人工知能)画像認識技術を応用し、高齢者施設で入居者の転倒を検知するシステム「ミライアイ」を開発したと発表した。転倒は同施設内で発生する事故の6割を占めており、早期発見や未然防止につなげるとともに、人手不足が深刻な介護職員の負担軽減も図る。

 昨年7月に資本業務提携した高齢者見守りサービスのエコナビスタ(東京)と共同開発。グローリーの中期経営計画によると、2024年度までに1万セットの販売を目指している。

 新システムは、個室の天井に設置した赤外線3次元センサーが回転して入居者の動きを追い、一般的な広さ(3メートル×6メートル)の室内を見守る。取得した画像を基に、入居者の姿勢からAIが「転倒」と判断すると、エコナビスタのアプリを入れた施設の管理用パソコンと、職員のスマートフォンに通知する。

 グローリーによると、従来のシステムは、物を拾ったりベッドに座ったりする動作などを転倒と誤って検知する課題があった。

 同社は最適な波長の赤外線を使い、直射日光の差し込む日中や真っ暗な夜間でも正確な検知を実現。3次元で骨格を割り出す仕組みを採用し、さまざまな姿勢をAIに機械学習させることで検知の精度を高めた。

 新システムは転倒に加え、ベッドから起き上がったりその端に座ったりと、転倒に至りそうな5種類の動作も検知する。介護職員は通知を受けたスマホで、前後20秒の映像を確認し、訪問が必要かを判断できる。

 通知の履歴や録画映像はクラウド上に蓄積。施設の管理用パソコンで保存・閲覧でき、家族への説明や事故防止策の検討に使える。映像は入居者のプライバシーに配慮し、全身にモザイクをかけて骨格のみを表示するようにしている。

 グローリーはエコナビスタとの協業で、新たな事業領域と位置付ける介護市場への参入を狙う。新システムについて担当者は「介護職員の人手不足の解決と安全・安心な見守り空間の提供に貢献できる。将来的にはクラウド上に蓄積されるビッグデータを解析し、新たなサービスにつなげたい」と期待を込める。