埼玉県内で見まもり電話の利用増 コロナ禍で孤立か
2021年12月17日朝日新聞
一人暮らしの高齢者らに定期的に安否確認の電話をかけて言葉を交わす「見まもり電話」の利用が増えている。埼玉県内で一人暮らしの高齢者が増えていることに加え、コロナ禍で外出や人と接する機会が減った高齢者らの不安が増していることが、背景にあるとみられる。
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「安心電話です。お変わりないですか」
さいたま市南区のNPO法人「このまちで暮らす会」では毎週、女性スタッフが登録している高齢者92人に安否確認のための見まもり電話をかけている。
「いつもありがとう」との返事に、「寒いですが、体調は大丈夫ですか。また来週かけますね」。1分に満たない通話が多いが、会話がはずんで悩み事を話してくれることもある。応答がない場合は翌日にも電話し、3日間通じない場合は緊急連絡先の親族らに知らせる。折り返してくれる人も多い。
登録者は70~80代が多く、さいたま市を中心に県内が大半だが、県外在住者も2人いる。3年前に自動音声から直接の電話に切り替えたが、今年は8月以降に24人が登録し、登録者が3割以上も増えた。
上田寧(やすし)代表理事(73)は、コロナ禍で孤立しがちな人が増えたことも大きいのではないかとみる。以前からの登録者でも、外出できないことで気分が沈みがちになる人も多かったという。「単身でなくても、外部との交流が減れば一人になった時にいきなり孤立してしまう状況もある。将来のことも考えて、気軽な外とのつながりの一つとして利用してほしい」と話す。
安心電話は、年齢、居住地、家族構成を問わず、誰でも登録できる。普段は月700円かかるが、日本郵便の助成を受けているため3月までに申し込めば県内の人は1年間無料。最大50人まで。
このほか、さいたま市でも、希望者に無料で月2回の見まもり電話をしている。対象は市内に住む65歳以上の一人暮らしの高齢者で持病のある人。100人が利用しているという。
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埼玉県春日部市では「高齢者安心見守り事業」の利用が増えている。コロナ禍で外出や人と接する機会が減った高齢者らの不安が増していることが、背景にあるという。
市は60歳以上の人たちで作るグループが参加する市いきいきクラブ連合会に事業を委託し、見守りを申し込んだ65歳以上の一人暮らしの人や65歳以上の人たちだけの世帯に、週1回ずつ電話をかけてもらっている。簡単な会話を通して安否を確認し、利用者の孤独を和らげようと、2012年度に始めた。
希望する人は無料で利用でき、10月末現在で55人が利用している。1回の電話は10分間が目安。話が長引いても大半のケースは20分未満で終わり、その場合は2回とカウントする。
市は今年度の電話の回数を計2860回と想定し、連合会への委託料を57万円余りと見込んだ。
ところが、新型コロナウイルスの「第5波」になった夏から秋にかけての時期を中心に、電話が長引くケースが相次いだ。「私は大丈夫かしら」「外出できない。墓参りにも行けない」「毎日だれとも話していない」などと、10分を超えて不安を口にする利用者が増えた。
その結果、今年度の電話の回数は当初の予定より1140回以上増える見込みに。市は連合会への委託料を23万円増やす補正予算案を組み、定例市議会に提案している。委託料を年度途中に増やすのは、事業をスタートさせてから初めてという。
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埼玉県内で、65歳以上の高齢者の一人暮らしは過去25年で約7倍になった。国勢調査によると、1990年に3万9千だった高齢単身世帯は2000年には9万7千になり、15年には27万5千まで増えた。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、20年に33万8千、40年には48万1千になるとしている。
見まもり電話の問い合わせ先
・このまちで暮らす会(080・6636・2076)
・春日部市高齢者支援課(048・736・1111〈内線7454〉)
・さいたま市(各区の高齢介護課へ)