小野地区で地域無線システム活用し高齢者見守り、「緊急福祉ブザー」配布【宇部】

2021年08月24日宇部日報


 小野地区は、今月からコミュニティー推進協議会(村谷啓介会長)が運営する「きずなトーク(地域情報伝達無線システム)」を活用し、一人暮らしの高齢者を日常的に見守る事業を本格導入した。体調の急変といった緊急時に、無料配布した小型発信機「緊急福祉ブザー」のボタンを押すと、近くに住む支援者に伝わる仕組み。宇部市内では初めて。 

 同地区が推進する「安心・安全なまちづくり」の一環。小野市民センターの武田尚文所長によると、4年前に独居の男性が風呂場で急死。「すぐ気付いていれば」との思いから自主防災会(清水隆司会長)のメンバーらが幾度も会議を重ね「高齢者の負担にならず、いざというときに有効な方法」として、持ち運び可能な同ブザー(縦9㌢×横5㌢)の配布を発案した。

 対象は70歳以上の独居世帯、または緊急時に支援が必要な住民。人口1115人のうち、70歳以上の独居者は約90人で同ブザーの希望者は41人だった。発信ボタンを押した際に信号を受信し、音声で知らせる機器・エリアトーク(縦15㌢、横18㌢)の設置場所は地区内の支援者宅。54人が協力を申し出た。あくまでも非常時の支援の幅を広げるのが狙いで、受信者に責任は生じない。

 18日には、清水会長と業者の山口自動車無線(鍋倉町)スタッフの笠井英樹さんが同ブザーを届けるため高齢者宅を訪問。ボタンを押すと近隣の1、2人に信号が発信され、支援を要請できるなどと説明した。

 受け取った篠川富美枝さん(90)は、夫が7年前に95歳で他界し、一人息子も57歳で亡くなった。「日々の不安を解消する手助けになり、携帯もできるので大変ありがたい。一日一日が大切な宝物だと感謝し、息子の分まで100歳以上長生きしたい」と笑顔を見せた。

 小野の人口は毎年20~40人ずつ減少。加えて人口に占める20歳以下の割合(7月1日現在)が2・78%、65歳以上が57%と少子高齢化が著しい。同地区振興対策委員会のプロジェクトチーム「スイートホーム」では、自治会集会所を拠点とした移住促進プランを企画するなど、さまざまな取り組みを進めている。