電気ポットからApple Watchまで、デジタルで緩やかな“みまもり”を

2021年07月30日ITmedia


 新型コロナウイルス感染症の影響で、離れて暮らす家族の安否を確認するのも難しい状況になった。近所に住んでいても、高齢の両親には頻繁に会えなくなってしまう。遠方に住んでいたらなおさら、という人は多いことと思う。

 そんな中、さまざまな会社がコミュニケーションや見守りサービスをスタートしている。その中には、コロナ禍以前から提供されているサービスもあるのだ。

 IoTという言葉が生まれる以前から、遠隔地の機器の操作で使用者の安否を確認するサービスは提供されている。象印の「iPoT」(アイポット)は、2001年3月に発売された通信機能付きの電気ポットで、給湯などの情報をメールで通知して使用者の安否が確認できるというもの。名前はiPodっぽいが、AppleのiPodは2001年11月発売だから、それより先だ。

 現在もこの電気ポットの利用者は、同社の「みまもりほっとライン」サービスと連動した使用状況の通知や、使用状況の推移(グラフ)から生活リズムの変化を把握できる。

 今では多くの会社、サービスが提供している機能を、20年前から提供し続けているというのが驚きだ。

 離れて暮らす両親に、子どもや孫の様子を伝えたいというニーズは多い。スマートフォンのビデオ通話を活用する人も多いだろう。一方でスマートフォンを使いこなせないという高齢者も少なくない。そういった層の人たちに向けた製品としては、メールやクラウドで写真を共有するフォトフレームなどもあるが、多くの場合は一方的にデータを送るだけなので、どのように見られているかは送り手側には伝わらない。

 チカク(東京都渋谷区)が提供する「まごチャンネル」は、TVにつなぐだけで送った写真や動画が視聴できるデバイスとサービスだ。送り主だけでなく兄弟らが一つの受信ボックスに写真や動画を送ることもできるので、デバイスを切り替えるなどの面倒がないのが便利な点だ。

 家の形をした受信ボックスは、新着の写真や動画があると窓に当たる部分が光って知らせてくれるので、視聴のタイミングが分かりやすい。視聴されると送信者のアプリに通知が来るので、それをきっかけに電話をしたり、視聴されたということで息災を確認することができる。

 さらに、セコムと協働プロジェクトで提供する「まごチャンネル with SECOM」では、独自のみまもりセンサーを加えて部屋の温度や湿度、照度を感知して記録する。アプリのグラフで確認できる他、起床や就寝、温湿度の急激な変化、熱中症の注意喚起などの通知を発信することで、必要な時に連絡するきっかけになる。

 「電話するまでもないが、どうしているか心配」という緩やかなみまもりを実現するソリューションだ。

 セコムは、既存のホームセキュリティやApple Watchと連携した安否みまもりサービスを今秋、開始する。ホームセキュリティのために設置したセンサー類を活用するもので、クラウドにアップロードしたセンサー情報をAIが解析し、起床や就寝、活動量、温湿度などから日々の健康状態や生活リズムをグラフ化したり、体調不良の前兆を検知した場合に通知するなどのサービスを提供するという。

 ホームセキュリティサービスと連動することで、万一の際の駆け付けサービスや、ニーズに応じて現地確認サービスも利用できるのが特徴。ホームセキュリティサービスは、家事や侵入などセンサー異常があった際に駆け付けるサービスの提供だが、安否みまもりサービスでは、それらのセンサーが収集するデータをAIが解析して日常のわずかな変化から注意喚起をすることで、体調の急変などを未然に防ぐことを目指しているという。

 セコムでは、離れて暮らす高齢者のステージに応じたサービスの提供に意欲的で、比較的元気な状態では「まごチャンネル with SECOM」で緩やかなみまもりを、足腰が弱って体調の急変が心配な段階になったらホームセキュリティやApple Watchと連動した安否みまもりサービスで安心を届けることを目指している。

 離れて暮らしていると、お互いに遠慮したり、身近なことの対応に気を取られてつい連絡を滞らせてしまうなどと言ったこともある。では、定期的に月1回など連絡をすれば良いかというと、それが十分な頻度であるかどうかも分からない。

 もちろん、連絡したい時に小まめに連絡するのが良いのだろうが、子育てに追われ、日々の仕事もある中では、遠方に暮らす家族のことはつい後回しになってしまいがちだ。そんな時に、行動記録の通知があれば連絡を取るきっかけにもなるだろう。