自治会高齢化と若者の壁、スマホで乗り越える!

2021年07月08日ZAKZAK


 地域の防災や防犯、一人暮らし高齢者の見守りなど役割や期待が増している自治会・町内会。しかし、役員を務めることの負担感は重く、各地で加入率の低下や役員のなり手不足や悩まされているのが実情だ。

 筆者の父親は定年を迎えた60代で町内会の役員になったが古参メンバーは軒並み80代以上。60代は若手で、70代でようやく中堅といった世代構成だったという。地域コミュニティーの住民の高齢化とともに、役員の高齢化も進む。また、ライフスタイルや価値観の多様化を背景に、町内会への関心が低下しているという指摘もある。

 こうした中、若い世代を呼び込むのは至難の業のようにも思える。だが、こうした自治体や町内会の活動においても、「スマホ」が若い世代とシニア世代をつなぐ架け橋になる可能性を秘めているという。介護職として働くかたわら、シニア世代向けスマホ教室を開催し、延べ2000人のスマホの使い方を教えてきたミヤケユウヤさん(介護みらいデザイナー)は次のように分析する。

 「これまでの自治会や町内会のありかたもそうですが、従来の日本の社会構造は『年長者が有利』になっています。なので、若者としてはできるだけ組織に近寄りたくない。意見を聞いてもらえないどころか、“若いんだから”とさまざまな役目を押し付けられる姿が目に浮かぶからです。ところが、スマホに関しては、若者と年長者で立場が逆転します」

 若い世代のほうが最新情報に詳しく、場数も踏んでいる。そのため、確実に優位に立つことができる。いくら甘言を並べられても、“下っ端”扱いされるところには行きたくない。だが、“先生”となると話は変わる。

 「しかも、自分にとっては日常生活になっている『LINEの使い方』『ネットショッピングをする方法』などを教えるなら、特別な事前準備は必要ありません。多くのシニア世代がスマホで困っているのは日常的な操作ですから、Win-Winの関係が成立しやすいんです」

 もっとも、わかりやすく教えるためには言い回しなどの工夫は必要。人によって説明の上手・下手は生じる。ただ、いずれにしても、若い世代側にとって「自治会役員をやってほしい」と「スマホ教室の先生をやってほしい」ではオファーに対する心理的なハードルはまるで違うのだ。

 スマホ教室を通じて関わりを持ち、見ず知らずの他人から“顔見知り”になっていく。その先に新たな関係が生まれる可能性もある。

 ミヤケさんがそもそも、地域活動を始めた動機の根幹には「自分と家族が安心して楽しく暮らし続けられる街にしたい」という思いがある。地域活動として、子どもたちの学習支援も行っているが、スマホ教室に通うお年寄りからノートやファイルなどの文房具を始めとする、さまざまな差し入れがあるという。

 たかがスマホ、されどスマホ。使い方次第、関わり方次第で、年齢の壁をひょいと飛び越え“お互いさま”の関係性をもたらしてくれるかもしれない。