高齢者向けサービスの今。安心と自由を両立する、高齢者向け戸建て賃貸住宅も登場

2021年06月06日EconomicNews


 新型コロナワクチン対策の切り札として期待されているワクチンの接種が始まった。東京、大阪に続き、横浜市などでも大規模接種会場が開設され、まずは65歳以上の高齢者を対象にワクチン投与が進められている。

 そんな中、大規模接種会場の周辺では、ワクチン接種の高齢者を対象とした宿泊プランを打ち出すホテルも登場している。例えば、株式会社阪急阪神ホテルズでは、自衛隊大阪大規模接種センターの利用者を対象に、接種者本人およびその介助者がワクチン接種券を提示することで、同社が運営するホテル阪急レスパイア大阪に特別料金で宿泊できる。

 国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、令和2年度の65歳以上の高齢者約22.4%が一人暮らしをしているとみられている。ワクチン接種直後の生活や副反応などの不安を抱えている人にとっては、自費とはいえ、願ってもないサービスになるのではないだろうか。

 また、宿泊施設だけではなく、高齢者住宅市場にも変化があらわれはじめている。

 株式会社矢野経済研究所が2020年に実施した「高齢者住宅市場に関する市場調査」を見てみると、2020年の高齢者住宅の市場規模は、「有料老人ホーム」「軽費老人ホーム」「シルバーハウジング」「サービス付き高齢者向け住宅」の4類型計で、供給戸数ベースで前年比6.9%増の97.0万戸が予測されている。

 国土交通省では、2025年までに高齢者人口に対する高齢者向け住宅の供給割合4%という目標達成を掲げており、各事業者もこれに向けて順調に供給を進めていることがうかがえる。

 しかし、その一方で、高齢者の約75%は「自宅に住み続けたい」と願っているという。その背景には「自宅で一生を過ごしたい」という情緒的な想いだけでなく、老人ホームなどでの共同生活に不安を感じたり、家族やペットと離れて暮らしたくなかったり、戸建てでなく集合住宅に住まうことへの抵抗感など、様々な想いもあるようだ。また、このコロナ禍では集団生活に対する不安も募っていることだろう。

 そこで、そんな利用者の声を反映した高齢者向けの住宅も登場し始めている。

 例えば、大阪府池田市で4月にオープンした、高齢者向け戸建賃貸住宅「彩りの郷 リベルテ東山」などがある。同施設は、大阪北摂地域を中心に特別養護老人ホームなどを運営している株式会社ポプラコーポレーションが開設したもので、最大の特長は「平屋の戸建て住宅」10邸で構成されたシニアタウンであることだ。

 高齢者向けの施設では、安全安心に暮らすための「見守り」が重要になる。しかし、手厚く見守れば見守るほど、入居者の自由やプライベートは制限されることになってしまう。その点、戸建てならば、自由とプライバシーを守ることができる。通常の高齢者向け施設では難しいペットとの同居も可能なのだ。

 「見守り」についても、エリア一帯に介護設備が施されている上、ALSOKの緊急通報システムを完備。さらには専用コンシェルジュが毎日訪問して、生活相談や営繕などの要望を聞いてくれるので安心だ。また、彩の郷内の農園やシアタールーム、カラオケルームなどの共用施設も充実しているので、のんびり気ままなセカンドライフを過ごすことができるのではないだろうか。

建物についても、積水ハウスグループによる施工なので、住み心地や耐久性、アフターサービスの面でも安心だ。同社ではかねてから、特養などの施設運営を経た先に「お年寄りが住みやすい“街”づくり」を目指してきたそうで、今回、それが実現したことになる。高齢者向けの「戸建」賃貸は非常に珍しいが、アクティブシニアを中心に今後、こういったシニアタウンの需要が拡がりそうだ。

 新型コロナのパンデミックが、なかなか収まらず、不安を抱いている高齢者も多い。しかし、ここに挙げた宿泊施設や高齢者向け住宅だけでなく、様々な分野で様々な業者が今、高齢者にやさしい社会を実現しようと動いている。そういったものを積極的に活用して、豊かなセカンドライフを過ごしていただきたいものだ。