高齢者を地域で見守る 意外なグッズ

2021年05月27日KNB WEB(北日本放送)


 県内のさまざまなSDGsの取り組みを紹介するシリーズです。SDGsのうち「健康と福祉」「住み続けられるまちづくり」にあたる取り組みを紹介します。認知症を患うなどした高齢者を地域で見守ろうという取り組みが、今年度から、砺波市と朝日町で始まりました。使うのは、日常生活でよく目にする意外なものです。

「見守りに活用するのはキャッシュレス決済でもよく目にするこちら、QRコードです」

 QRコードが記されたシール。かばんや靴など、日ごろ身に着けるものに貼って使います。

 たとえば認知症を患った高齢者が道に迷ったとします。様子がおかしいと感じた通りがかりの人が、QRコードを手持ちのスマートフォンで読み取ります。

 すると、あらかじめ自治体に登録されたこの高齢者の身長や髪形などの身体的な特徴、認知症などの既往歴、保護時に注意することなどが画面に表示されると同時に、高齢者の家族などに知らせが届きます。その際、氏名や住所など個人情報は公開されません。

 そして発見場所や健康状態などを入力し、掲示板上で連絡をとりあい、保護する仕組みです。

 この見守りシールは今年度、県内では砺波市と朝日町で導入が始まりました。

 砺波市地域包括支援センター 高田知枝さん(保健師)
「市をまたいでお出かけされても、早期に発見、保護できるようなシステムをつくるために取り組みを始めました」
お年寄りは
 「シールがあったらね、迷ったときとかに誰かに教えてもらえたら安心やね」「誰かに助けていただけるということか」

 砺波市内の福祉施設に通う女性。認知症の症状があり、自宅から10キロ離れたところで警察に保護されたことがあります。県外に住む息子が心配して、今回、登録の手続きをしました。

 県内の認知症に関係する行方不明者は、おととしで310人。過去5年間で最も多くなっています。

 砺波市でもことし、きのうまでに13人の高齢者が行方不明となる事案が発生しています。

 砺波市の人口に占める高齢者の割合は、ことし4月1日時点で30.2パーセント。2040年には、38.4パーセントになると推定されています。

 砺波市地域包括支援センター 高田知枝さん(保健師)
「高齢化が進んでいるので、高齢者が増えるということは認知症の方も増えていることはあると思います」

 ひとり暮らしでも、高齢者が安心して住み慣れた街で暮らし続けられるために、地域で見守り支えるこの取り組み。それには見守る地域の理解と協力が欠かせません。

 小規模多機能型居宅介護支援事業所はるかぜ庄東 野村直美さん
「声をかけるときに、確保してあげなくてはいけないとか、なんとかしてあげようと思って、気が焦ったりすると思うんですけど、第一前提としては、安心する声掛けをしていただきたいと思います。ちょっとお顔とお顔を対面させて観察をまずしていただいてから、お声がけしてもらって『ちょっと撮らせてもらっていいですか?』というようなことを確認しつつ、自然な感じで撮られたらいいかなと思います」

 4月の導入開始から、砺波市ではこれまでに12人が登録していて、市はこれまで実施してきた協力事業所から電話で情報提供してもらう市内のネットワークに加えて、市や県をまたいだ場合の早期発見にも期待を寄せています。

 砺波市地域包括支援センター 高田知枝さん(保健師)
「認知症になっても住み慣れた場所で、生活していくためには、まずは、ほっとなみ見守りシール交付事業というものを知っていただいて、地域の中で、もしこのシールを付けて困っている方がおられたら、ぜひ、読み取りにご協力いただけたらと思います」

 この見守り事業、全国では先月末までに139の市町村が導入しているということです。