一人暮らしの高齢者を「見守り電球」 コロナ禍でむつ市
2021年05月21日朝日新聞
青森県むつ市がIoT(モノのインターネット)を使い、一人暮らしの高齢者を遠隔地から見守る取り組みを本格導入する。新型コロナウイルスの影響で、離れて暮らす家族がなかなか帰省できないことも考慮した。「見守り家電」は広がりをみせているが、自治体が活用する事例は全国でもまだ少ないという。
市によると、見守りにはスマートフォンのアプリと連動しているIoT電球を使う。トイレや洗面所など日常生活で使用頻度が高い場所に、発信器が取り付けられた電球を設置。長時間ついたままだったり、しばらく使われなかったりしたら、異変が起きた可能性があるとして、遠隔地に住む家族のスマートフォンに警告が届くシステムだ。
2020年2~9月、一人暮らしの高齢者25人とその家族の協力を得て、市とNTTコミュニケーションズ、システムを製作する同社子会社のNTTレゾナントと実証実験を行った。電球が高齢者宅のソケットと合わないなど課題も見つかったが、総合的に有効だと判断し、実用化に踏み切ったという。
市地域包括支援センターの辻郁子所長は「コロナ禍にあって、離れて暮らす家族が一人暮らしの親元に帰れない状況が続いている。高齢者を日常的に見守るとともに、家族の不安を解消する手助けがしたかった」と狙いを話す。
約2万4千世帯が暮らす同市では、65歳以上の一人暮らしの高齢者が約3200世帯を占める。21年度はこのうち100世帯を対象とする想定で、事業費として162万円を予算に計上している。システム利用は21年度は無料だが、22年度以降も使用する場合は、月額580円(税別)を利用者が負担する。
今のところ12世帯しか申請がないといい、辻所長は「様々な家電と比べても、電球は見守りに有効な手段だ。多くの世帯に使ってもらいたい」と呼びかけている。
プライバシーに配慮してカメラやマイクを使わず、使用状況で高齢者の安否を確認する「見守り家電」が注目されたのは01年のことだ。湯沸かしポットからお湯を注ぐたびに、見守る側の携帯電話などに情報を配信した象印の「みまもりほっとライン」が最初とされる。その後、冷蔵庫やエアコン、テレビのリモコンなどを使った見守り家電が次々に登場している。