高齢者口座をAIが見守り 地域金融、無駄遣いや詐欺被害防止

2021年05月20日SankeiBiz


人工知能(AI)など最新技術を活用し、地域金融機関が口座取引状況により高齢者を詐欺被害から守ったり、無駄遣いを防いだりしてくれるサービスを相次ぎ導入している。お金の使い方から家族が認知症の兆候に気付くことも。ITを使った金融サービスはフィンテックと呼ばれ、高齢化社会の金融面の課題を解決する手段として期待が高まっている。

 「○○さんのお金の使い方に変化が見られました」-。佐賀県の60代男性に異常を知らせるメールが届いた。

 福岡銀行(福岡市)は高齢者の口座見守りサービスを昨年から試験導入した。高齢者が過去に支払った公共料金やATM(現金自動預払機)の利用データをAIが分析。いつもより多くの金額を引き出したり振り込んだりした場合、本人と家族のスマートフォンに警告メールが届く。

 口座から多額の現金が引き出された直後に家族に通知が行くため、振り込め詐欺の未然防止が期待できる。母親と離れて暮らす東京都の30代女性は「変化がないかどうか客観的に確認できるので安心だ」と話した。

 開発したエクサウィザーズ(東京)の担当者は「電気代や水道代の傾向を分析すれば、電気のつけっ放しや水の出しっ放しなど認知機能低下の兆候を発見するのに役立つ。異変に早く気付いてあげることが大切だ」と話す。複数の銀行が導入を検討しているという。

 横浜銀行(横浜市)は、マネーロンダリング(資金洗浄)や特殊詐欺などの犯罪に悪用されている可能性が高い取引をAIで監視するサービスを導入した。

 これまでは膨大な取引状況を、主に人の目でチェックしていたが、AIが自動で疑わしい口座を抽出する。人間が気付きにくい口座の動きも見つけることができるようになったと話す。

 フィンテック企業のマネーフォワードは、京都信用金庫(京都市)と共同で、認知症を検知するため顧客口座を見守る実証実験を行った。本人の同意を得て一定額の出入金があった場合、家族や後見人、ケアマネジャーらに警告メールを送信する。計画的なお金の使い方ができているかどうかも遠隔で確認できる。

 マネーフォワードの滝俊雄執行役員は「高齢化が進み認知症の患者が増えていく中、高齢者の口座の見守りは喫緊の課題だ。最新技術でデータを分析し、きめ細かいサービスを提供していく必要がある」と話した。