AIキャラが見守り アイシン、自動運転車で不安和らげ
2021年04月05日日経新聞
アイシンはAI(人工知能)技術を使い、自動運転バスの車内で見守りができるシステムを開発した。仮想の女子キャラクターが、自然な対話の中で乗客の転倒防止につなげたり、忘れ物がないように気づかせてくれたりする。自動運転は乗客以外は無人が前提で子供や高齢者らが不安に思う場合がある。AIの対話システムで不安感の解消につなげる。
「手すりを持ってください」。仮想の女子キャラ「Saya(サヤ)」がバスに乗り込んだ乗客に語りかける。車内で安全に過ごすための行動を促すのが目的で、対話には「うーん」や「えっと」といった間をとるための自然な言葉も出てくる。客の名前を認識することもできて、名前を呼ばれながら「なんでも聞いてください」、「夢はたくさん友達を作ることです」といった会話を楽しめる。
サヤはアーティストの夫婦ユニット「TELYUKA(テルユカ)」が制作するコンピューターグラフィックス(CG)のキャラクター。実写に近い精緻さで「生身の人間のようだ」として話題となったキャラだ。
アイシンが強みを持つカメラ画像の認識技術で、乗客の顔や体の動きを検知する。さらに、検知した画像や音声、蓄積データをAIで解析し、乗客の状況や意図を判断できる。
このシステムはアイシンと資本業務提携したAI開発スタートアップのIdein(イデイン、東京・千代田)や豊橋技術科学大学などとの協業で開発した。開発に携わるアイシンの大須賀晋氏は「人との自然なコミュニケーションを目指した」と話す。社会実装はこれからだが、バスを中心にいろいろな乗り物で使ってもらう想定だ。最先端のロボット研究としての意義もあるという。
アイシンは道路維持管理の支援サービスでゲーム「パックマン」との連携を発表した。パックマンが道筋に従ってクッキーを食べ集める様子と組み合わせることで、道路管理車両がどこを走ったかをわかりやすく示す狙いがある。1日には東京・秋葉原にAI開発の新拠点も開設し、AIやコンテンツ拡充の動きが相次ぐ。
同じく1日には自動変速機子会社(旧アイシン・エィ・ダブリュ)を統合した新生「アイシン」が発足したばかりだ。自動運転やつながる車を指す「CASE」競争の中、一般の人にもなじみやすいコンテンツを重視する姿勢を強めることで、企業認知度を向上させる狙いもある。