多摩NT 独居の高齢者を電灯で見守り

2021年03月18日読売新聞


 最初の入居からまもなく50年を迎える多摩ニュータウン(NT)では、独り暮らしのお年寄りをどのように見守るかが課題だ。ヤマト運輸(本社・中央区)はNT内で見守り機能があるLED電球の実証実験を行い、先月からそのサービスを全国に拡大させた。多摩NTは今後、日本が直面する諸課題の解決策を探る“実験の場”にもなりつつある。

24時間スイッチ動かなければ…

 多摩市永山のマンションに一人で暮らす近藤浩さん(78)が毎日歯を磨く洗面台は、正面に鏡と照明を備え、見た目はごく普通だ。だが、照明の中には通信機能付きのLED電球「HelloLight」が取り付けられている。

 照明の点灯や消灯の情報は携帯電話回線で基地局に届けられ、電灯のスイッチに24時間動きがない場合、事前登録された家族などにメールで通知される。もし家族が電話をかけても連絡が取れない場合、ヤマト運輸のスタッフに訪問してもらうことも可能だ。

 実験に協力した近藤さんは「朝晩に(電灯の)スイッチをつけるのは日常生活の一部で手間にならない。自分の身にいつ何が起きるかわからないので、見守られている安心感はありがたいですね」とほほ笑む。

 同社が、多摩NTの諏訪・永山団地でこの実証実験を始めたのは2020年6月。同団地は多摩NTで最も早く入居が始まった場所だ。独り暮らしのお年寄りがまとまって暮らし、同社が地域住民の家事や買い物を手伝う拠点「ネコサポステーション」も開設していたことから、実証実験にふさわしい場所として選ばれた。

 協力したのは約60世帯で、実際に電球を利用してもらいながらサービスの実効性や利便性を聞き取っていった。当初は午前0時を起点に24時間計測して午前9時に安否メールを送る設定だったが、これには利用者から「メール送信に時間差がない方がもしもの時の対応が早いのではないか」との指摘があった。そこで午前9時からの24時間を計測してすぐにメールを送るように設定を変えるなどシステムを改善していった。

 こうした試行錯誤を踏まえ、同社は2月5日からサービスを全国展開し、3月8日現在、40都道府県で約340人が利用している。利用料は電球1個あたり月額1078円(税込み)。地域包括支援センターや民生委員ら「見守る側」の高齢化や人材不足が深刻になる中、この見守りの仕組みは注目を集めており、日野市では使用料金の一部を補助する制度も始まった。

 同社の川野智之さん(35)は、価格が高い見守りサービスが多い中で気軽に始められるといい、「特に『自分にはまだ見守りサービスは必要ない』と考えている元気な高齢者に受け入れられている」と手応えを感じている。

 問い合わせは、ヤマト運輸ネコサポサービスセンター(0120・545・425)へ。