スマホアプリで高齢者見守り コロナ病床にも応用

2021年02月24日日経新聞


介護サービスのイツモスマイル(徳島市)は施設や在宅で介護を受ける高齢者の見守りシステムを開発し、販売を始めた。スマートフォンのアプリを活用し、専用機器を必要としないため導入しやすい。複数人を同時管理できる機能を生かし、新型コロナウイルス患者を受け入れる医療機関などでの利用も見込む。

見守りシステム「イツモツナガル」はIT(情報技術)スタートアップ企業のムービーノート(福岡市)と共同開発した。スマホやタブレットを見守り対象者のベッド近くや、医療・介護施設の居室に置く。システムと連動したナースコールを押すと、施設内の看護師や介護職員らと画面越しに会話できる。在宅介護の場合も同様の操作で介護事業者につながる。

施設は100室規模をパソコンやタブレットの画面で同時に管理することが可能。ナースコールの発信がなくても、定期的に見守り対象者の様子を確認できる。部屋の温度や湿度を計測したり、心拍数や呼吸数といった体の異常を検知したりするセンサーとの連動もオプションで用意する。

離れて暮らす家族もアプリを自分のスマホにダウンロードし、システムのアカウントを取得すれば、家族からの発信で見守り対象者の端末につながる。新型コロナの感染防止対策で面会制限のある施設に入居する親らと、いつでもオンライン面会ができる。複数のアカウントを取得することもできる。

システムの初期導入費用は1床あたり15万~20万円を想定する。レンタルも設定する。基本アカウントの月額利用料は1000~1500円、家族のアカウントは500円となる。現時点で米アップルの基本ソフト(OS)のiOSを搭載するスマホなどの利用に限定しているが、近く米グーグルのアンドロイドへの対応も予定している。

高齢者の見守りだけでなく、新型コロナ患者の体調管理の需要も取りこむ。すでに大阪府内の病院が新型コロナ患者用として2床分を導入した。同病院は「看護師の負担軽減につながる」とみて、さらに1床分を追加する計画という。患者を受け入れているほかの医療機関からの引き合いも増えている。

イツモスマイルの大田仁大社長は「(新型コロナ患者向けは)開発段階では想定していなかったニーズ」と語る。同社はベッドに設置したセンサーで呼吸数や心拍数を監視し、異常を検知したら看護師らに知らせるシステムを用意する。また、軽症者が療養するホテルでもナースコール機能を省いた安価なタイプを提案する。

初年度の販売目標は5000セット。将来は年間1万~2万セットを計画している。大田社長は「システムの汎用性は高く、応用範囲は広い。自治体などと連携して中山間地域での在宅介護などに利用が広がることを期待する」と話す。

イツモスマイルは徳島県を中心にサービス付き高齢者住宅やデイサービス施設などを運営する。2021年3月期の売上高はグループ全体で約20億円の見通し。見守りシステムは自社施設にも導入している。