中部電力、三菱商事と家庭に的 宅配や見守りで囲い込み

2021年02月24日日経新聞


中部電力グループの電力小売会社、中部電力ミライズと三菱商事は24日、生活関連の物販やサービスを提供する新会社を2021年4月に共同で設立すると発表した。新会社名は「中部電力ミライズコネクト」(名古屋市)。食料品を宅配したり、高齢者の見守りサービスを提供したりすることで、一般家庭の囲い込みにつなげる。まずは中部地域で営業を始め、全国に広げていく。

新会社の資本金は12億5000万円、中部電ミライズが51%、三菱商事が49%出資する。三菱商事の小売りや物流、取引仲介のノウハウを生かし、ミライズと契約する家庭に幅広い生活関連サービスを提供する。新会社は50人規模で発足するが、サービスの拡充に合わせて人員を増強する。

第1弾として、会員制量販店コストコの総菜や生鮮食料品を宅配するサービスを中部地域で22年3月期中に始める。コストコの会員でなくても利用できるという。配送は三菱商事と取引する業者が担う。24日の記者会見で中部電の林欣吾社長は「当社グループだけではできなかったサービスだ。他社にも事業提携を広げ、生活需要を取り込んでいきたい」と話した。

三菱商事グループのローソンを活用したサービス展開を予定する。コンビニを軸とした複合店舗で電気や見守りサービスを受け付けたり、物流拠点として活用したりする。東京海上グループと組んで結婚や出産などライフステージの変化に合わせた保険の提案も計画する。

中部電は大阪ガスと共同出資するCDエナジーダイレクト(東京・中央)が首都圏で電気やガスの小売りを手掛ける。新会社はCDエナジーの顧客向けにサービス提供を検討するほか、サービス自体を地域のガス会社などに「卸売り」することも視野に入れる。

2000年の電力小売りの自由化以降、中部電は他の電力大手や新電力に牙城を切り崩された。中部地域での電力販売シェアは約85%と、自由化前に比べ15ポイント減った。生活全般にサービスを広げ顧客の囲い込みを狙う。

中部電は三菱商事とオランダの電力会社エネコを共同買収し、秋田県沖や千葉県沖で洋上風力発電の共同開発を計画するなど関係を強めてきた。三菱商事にとってはエネルギーの川下にあたる一般家庭と接点を持てるのが利点だ。中部電の林社長は「1×1を3以上にできるよう質量ともにサービスを高めていきたい」と話した。