台湾発の検温ロボット軌道に、高齢者向け進出も視野

2021年02月17日日経新聞


北海道函館市などの一部の保育所で2020年、小型ロボットによる検温が始まった。同市のIT(情報技術)企業、グローバル・コミュニケーションズが台湾系企業の小型ロボ「ケビーエアー」を使うシステムを開発した。

あいさつすると「おはよう」と返事する姿が愛らしい。上部のモニターは顔認証機能付きのカメラで、市販の非接触型体温計をロボットと組み合わせて体温の測定や記録をスムーズにこなす。2020年夏に外部販売を開始した。価格(税別)は、ロボット単体が1台14万8000円、同年秋に追加投入したケビーエアー用検温機器とのセットが45万8000円、クラウド利用料が月3000円かかる。

人間と会話などをやりとりできるコミュニケーションロボットは接客用や家庭のペット代わりとして急速に普及している。ケビーエアーは高さ31.8㌢㍍、重量2.5㌔㌘と机に置けるサイズで、人工知能(AI)などの性能が高いという。函館市や福島町、札幌市などの保育施設や企業、歯科医院、ライブハウスなどに30台以上を納品し、サービスは軌道に乗ってきた。

同社は優秀な女性の育児を理由とする退職を減らそうと、函館市や札幌市などで保育所6カ所を運営してきた。ロボ事業は新たな柱と位置づけ、笹谷隆社長は「高齢者の健康管理向けの機能を21年に追加する」と意気込んでいる。

グローバル・コミュニケーションズの売上高は6億2600万円(20年3月期)。情報システムの開発やIT研修が主力で、製造部門は持たない。台湾に拠点を置くNUWAロボティクス製のケビーエアーが台湾の学校で広く使われていることを知り、笹谷社長が19年に訪問。ヒト型ロボットとの縁が始まった。

保育所や企業など出入りする人が固定した施設では、顔認証と連動して各人の体温を記録・通知する。より厳重なコロナ対策を望む事業所には、体温が基準値を上回る人には解錠しないよう設定することもできる。店舗などでは3人程度を同時にチェックし、マスク非着用や発熱している人だけに注意喚起する。

NUWAは20年に日本法人を設立し、グローバル・コミュニケーションズが開発・販売パートナーになった。現在は高齢者向けの見守りや認知症予防などの機能を開発中。独り暮らしの高齢者が測った血圧などを遠方の家族やかかりつけ医に知らせたり、本人に服薬の時刻を知らせたりといった使い方を想定している。動画や腕の振り回しにより、脳トレーニング(脳トレ)や体操、踊りの相手もできるという。

笹谷社長は「ロボットは本来はプログラミングや英語の勉強、健康管理といった多様な使い方のためにある」と話す。フレンドリーなロボットの力も借り、新たな顧客との縁をつなごうと策を練る日々だ。

▼コミュニケーションロボット 

工場で使われる産業用ロボットに加え、近年は家庭やオフィス、商業・公共施設で人間を補助するサービスロボットが活躍している。人間と会話などができるのがコミュニケーションロボットだ。

調査会社のシード・プランニング(東京・文京)は2018年、国内市場規模は同年の約30万台から2030年に約900万台へ増えるとの予測を発表した。ソフトバンクグループの「ペッパー」などが有名で、ホテルや店舗での接客、介護、学習支援など用途は幅広い。ロボットメーカー同士や安価なスマートスピーカーとの競争が激化しており、機能や使い道の提案が重要になっている。