高齢者見守り AI電話

2021年02月09日読売新聞


 AI(人工知能)を使って高齢者に自動的に電話をかけ、健康状態や安否を確認する実証実験を、県が8日、五條市、黒滝村、川上村の高齢者約30人を対象に始めた。高齢化がますます進む中、人材の限られた過疎地で効率的に高齢者を支援するシステムの構築を目指したいという。

県 3市村で実証実験

 「昨夜はよく眠れましたか?」。スマートフォンから自動音声が聞こえると、黒滝村の徳田初はじむさん(78)が「はい」と応じた。自動音声は四つの質問をした後、「朝日を浴びると生活リズムが整います」と健康づくりのミニ知識を伝えて切れた。

 最初は緊張した様子だった徳田さんは「言葉ははっきり聞こえて、自然に話せた」と満足した様子。妻と2人で暮らしているが、「近所でもほとんど高齢の夫婦か一人暮らし。離れた一軒家で日々の様子を見に行けない家もある。こうやって見守ってもらうのはありがたい」と笑顔を見せた。

 システムは、県と連携協定を結んだNTTドコモが開発した。AIが毎日定時に、登録された携帯電話や固定電話に電話をかけ、健康に関する日替わりの質問をする。連絡が取れないときは自治体に通知する。

 黒滝村では65歳以上は約370人で、うち約100人が一人暮らしという。徳田さん宅でやり取りを見守った村の保健師の猪ノ本朋香さんは「一人だと丸一日誰とも話さないこともあるので、しゃべること自体も効果がある。聞き上手なAIになってほしい」と実感を語った。

 県南部の過疎地では、高齢化が進む一方で、看護師らが訪問するにも移動距離が長く、マンパワーも限られている。効率的に支援する方法を模索していた県は、多数に連絡し、音声が認識できるAIに着目した。

 昨年10月に3週間、黒滝村で主に60歳代の10人を対象に実証実験した。しかし、AIが声を認識する技術は一般的に40歳代以下を主な対象にしているといい、音声の認識率は70%程度にとどまった。今回は改良したAIで、実際に利用する75歳以上を対象にし、26日までの3週間、日替わりで質問し、音声認識の精度を上げたいという。