高齢者の安心安全守るブザー 緊急時に利用、各戸に設置

2021年02月03日山陰中央新報


松江市・旭(ひ)の森地区で高齢者の家々に、救援を求めるブザーの設置が進んでいる。体調の急変といった緊急時に活用してもらい、屋外スピーカーから近隣に鳴り響くブザー音で、住民が察知して助ける仕組み。地元住民グループが発案し、高齢者の安全安心につながって喜ばれている。

 旭の森地区は同市郊外の福原町と上本庄町にまたがる住宅街。人口約130人で高齢化率が約48%と高く、地区内69戸のうち70歳以上の高齢者がいる世帯は43戸で6割を超す。さらにそのうち17戸が独居高齢者宅。住民有志の同地区見守り隊が、高齢者が安心して暮らせる仕組み作りに取り組んできた。

 ただ高齢者が日々、家の前に旗を立てて安否を知らせる方法は旗の出し入れが面倒くさがられ、協力を得にくいのが課題。訪問活動も年2回と限界があった。

 高齢者の負担にならず、いざという時に有効な方法を模索する中、2019年に見守り隊長に就いた見崎喜美男さん(71)が「音を出せば、周りが気付けるのではないか」とブザー設置を発案した。

 スイッチは有線式ながら居間や寝室など屋内で持ち運びでき、押すと、屋外のスピーカーから音が響く。音の大きさは幹線道路付近ほどとされる83デシベル。静かな住宅街なら、屋内にいても気付くという。

 見崎さんが、かつてコンピューターメンテナンス会社に長年勤めた経験を生かして部品を入手し、設置工事を無償で担当。1軒当たり1900円以内という部品代は市の補助金を財源に充てている。19年度以降、独居高齢者宅から設置を進め現在、30戸に設置済み。21年度で高齢者宅43戸に行き渡らせる。ブザー設置済みで1人暮らしの見崎護さん(73)は「ブザーがあって、安心して生活できる」と喜ぶ。

 幸い、これまでブザー音が地区に鳴り響く緊急事態は起きていない。見崎喜美男さんは「ブザーが鳴ったときにはすぐに助けられる。みんなで助け合っていきたい」と話す。