NTT東、千葉で児童・高齢者見守り実験 木更津の過疎地

2021年01月28日日経新聞


NTT東日本は千葉県木更津市内の山間部で、省電力により長距離通信ができる無線技術「LPWA(ローパワー・ワイドエリア)」を活用して児童や高齢者を見守る実証実験を始めた。高齢化が加速し、学校の統廃合も進む過疎地を舞台に、ICT(情報通信技術)の力で暮らしの安心・安全を守るモデルを築く。

1月から市内の富来田地区で3月末までをめどに大きく2つの実験を始めた。1つはセンサーを活用した小学生の見守りだ。児童のランドセルに手のひらサイズのセンサーを付け、学校内や自宅、学童施設などに受信アンテナを設ける。

児童が近くを通るとセンサーが信号を発し、保護者に通知メールが届いて居場所がわかる。保護者は児童が下校して時間がたっても自宅や学童施設に着かない場合といった異変に早く気づくことができる。学童施設ではどの子供が訪れたか自動で記録し、職員の負担軽減にもつなげる。

災害時の高齢者らの安否確認にも役立てる。一人暮らしの高齢者や要支援者らにボタン型のセンサーを配布。それを非常用の持ち出し袋などに入れておき、災害時には避難所に持参してもらう。学校や公民館などに着いてボタンを押すと、自治体や遠方の家族に通知が届く。実験では実際に避難所に来てもらい、稼働状況を確認する。

NTTは過疎地で高齢者や子供の安心・安全を守る仕組みの確立を狙う。富来田地区は住民の4割超が65歳以上と高齢化率が高く、一人暮らしも多い。家々などが離れた地域もあり、2019年秋、房総一帯に大きな被害をもたらした台風15号の際は安否確認が市内で最も遅れたという。

19年の小学校の統廃合後は通学距離が延び、登下校中に大人の目が十分届かなくなったとの不安も住民から出ているという。市はセンサーの導入により、単身の高齢者や子供たちに注意を払いやすくなると期待する。

NTTと木更津市はこれまで、山間部で被害が増えているイノシシを捕獲するために仕掛けたわなを遠隔監視して猟師の負担を軽減する仕組みや、市内の大規模イベントに動員する警備員の適正な配置などに通信技術を活用した実証実験を続けてきた。

同社は23年度までに50自治体と通信技術を生かしたスマートシティの推進に向けて連携することが目標という。担当者は「ICTで社会課題を解決できるよう、積極的に全国の自治体と手を組んでいきたい」と話す。