昭和村、全域に無料Wi-Fi 観光や移住を後押し、介護支援や防災強化

2021年01月10日福島民報

 

 新型コロナウイルス感染拡大に伴いオンライン通信の需要が高まる中、昭和村は村内の生活圏全域で、無料Wi-Fi(ワイファイ)を使える環境を整備する方針を固めた。二〇二二(令和四)年度に一部地区で先行的に導入し、二〇二三年度の全域整備を目指す。防災や農業、福祉、教育、生活交通など多くの分野でのICT(情報通信技術)活用につなげる。村民らの生活の利便性向上が期待される。

 村は二〇二一年度から十年間の将来像や方向性を示す第六次振興計画に、通信環境の整備方針を盛り込んだ。同年度に調査や設計に着手、二〇二二年度に矢ノ原地区で先行的に導入し、二〇二三年度に全域で利用できるようにする計画だ。無線の電波を周辺に発する「アクセスポイント」と呼ばれる装置を数百カ所以上に設置する方法を検討している。

 自治体が地域の防災拠点や観光地周辺に局所的に無料ワイファイを整備するケースはあるが、全域をカバーする事例は全国でも先駆的とみられる。県情報政策課の担当者は「少なくとも県内でそうした事例は承知していない」とする。

 村は、ワイファイによって整う通信環境を生かしてICT活用を推進し、人口減による人手不足を補っていく。例えば、豪雨時には消防団員らが河川付近に駆け付けて水位を確認しているが、ICTを活用すれば遠隔で状況の確認ができる。農作物の生育管理を遠隔で行うことや、通信カメラを活用したお年寄りや要介護者の見守りなどが想定される。オンライン教育、生活交通など幅広い活用が期待される。

 誰もがオンライン通信に挑戦しやすくなる利点もある。コロナ禍を機にオンライン通信に注目が集まっているが、村内は高齢者が多く、通信環境を整えていない人も多いという。

 無料ワイファイ整備によって、スマートフォンやタブレットなどの端末を用意するだけで情報の入手や発信が可能となる。

 同村と会津美里町を結ぶ四〇一号国道博士峠バイパスの整備なども進む中、村民はワイファイが観光客や移住者を呼び込む上でさらなる後押しになるとみる。村内でインターネットを使った仕事をしている海野正輝さん(33)は「間違いなく暮らしが便利になる。リモートワークを実践する企業の誘致にもつながるだろう」と話す。

 村総務企画係の担当者は「人口が減っても住民に心地よく過ごしてもらうには、先進技術の活用が肝となる。『先進的過疎』に挑戦していく」と語った。