親の安否はデジタルで確認 手軽な“見守りサービス”が続々登場

2021年01月02日AERA dot.

 

 新型コロナウイルスの感染拡大で、年末年始も実家に帰省できない人が多いのではないだろうか。遠くに住む親の安否は子どもたちにとって最大の心配事だが、デジタル機器を使ったサービスを利用すれば手軽に見守れる。ただ、万能ではない。特徴を理解し、親とよく相談しながら活用したい。


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 ソフトウェア会社「AP TECH(エーピーテック)」代表の大西一朗さん(61)は、80代半ばの母親と岩手県内の実家に住む。父親は施設で暮らす。親を見守るため、家族を東京に残してきた。

 ただ、大西さんは仕事で家を不在にすることが多い。耳が遠く、視力も衰えた母親のことが心配で、心拍数や歩数、位置情報などがわかる米アップル社の腕時計型端末(アップルウォッチ)を着けてもらっている。同社のスマホ・iPhone(アイフォーン)を通じて、母親の情報を見られるからだ。

 その専用アプリを開発したのがAP TECH。2021年3月から本格的に事業展開する。料金は月1560円(税別)で、3人まで閲覧可能。月520円(同)で閲覧者を1人追加できる。必要なのはアップルウォッチの充電だけだ。大西さんは今、家族5人ほどで母親の情報をチェックしている。

「いつでも状況を確認できて、とても便利です」

 デジタル機器を使ったサービスはさまざまだ。象印マホービンが展開しているのは電気ポットの活用。レンタルのポットの底に通信機器を内蔵し、電源の入・切、給湯の情報を遠隔地に住む家族にメールで知らせる。

 ドアの開閉を検知するセンサー機器を活用したものもある。やさしい手とSBパワーが共同で提供するサービスは、玄関やトイレのドア、冷蔵庫の扉などに設置すると、スマホの専用アプリで開閉状況や生活状況がわかる。室内温度や湿度も検知し、熱中症などの危険も察知できる。

 カメラを使ったサービスもある。パナソニックの屋内HDカメラは、部屋に置いておくだけ。水平方向に約118度、垂直方向に約63度の広画角レンズで撮影。専用アプリでスマホに接続すると、遠隔地からも見られる。内蔵スピーカーとマイクで会話も可能だ。温度センサーも備え、室温も確認できる。

 見守りロボットを活用する自治体もある。NECの「パペロ」を導入するのは静岡県藤枝市だ。簡単な会話ができるロボットで、家族がスマホでメッセージを入力すると読み上げる。カメラで1日3回、決まった時間に写真を撮って家族に送る。

 同市は65歳以上の単身者か要介護・要支援者の世帯を対象に20年10月から提供している。利用料金は、Wi-Fi(ワイファイ)環境があれば月700円(税込み)、なければ月1580円(同)だ。

 ただ、7~9月の実証実験に参加した14人のうち、5人が利用をやめた。

「家族と本人の両方がロボットにいいイメージを持っていると続きますが、家族だけの意見で導入しても本人が使うつもりがなければ、長く続きません」(市担当者)

 これはロボットだけの問題ではない。ウェアラブル(装着型)環境情報ネット推進機構の板生清理事長は指摘する。

「人に監視されたり、何か手伝ってもらったりするのは、自尊心の強い高齢者にとってうれしいことではありません」

 みずほ情報総研チーフコンサルタントの羽田圭子さんは、こうアドバイスする。

「親の『気持ち』も見守ってあげましょう。近所や知り合いの例を紹介したり、自治体など第三者に勧められたと柔らかく話してみたりするのも有効です」

 ほかにも課題はある。野村総合研究所コンサルタントの郭日恒さんは、こう話す。

「山間部では電波の通信がよくないことがあります。また、見守る人が離れていると、見守られている人が転倒してもリアルタイムで対応できるかどうか」

 センサーがついた機器の場合、ペットが通ったりカーテンが動いたりして誤作動するかもしれない。その場合も誰かが駆け付ける必要がある。

 近所の人に家の鍵を預けるのが難しければ、羽田さんは、遠隔地からスマホで家の鍵の解除ができる「スマートロック」を勧める。

 また、機器システムの契約者を家族にしておけば、親の認知機能が低下しても契約の追加や解約などがしやすいという。