電気・ガス・水道を一括で自動検針 静岡で実証試験

2020年12月18日日経新聞

 

中部電力と静岡ガス、静岡市は自動検針を一括して行う実証試験を始めた。中部電のスマートメーター(次世代検針器)を使い、電気だけでなくガスや水道の使用量データも自動で収集する。検針業務を効率化するほか、新サービスの創出や災害復旧の迅速化にもつなげたい考えで、実用化に向けて課題を洗い出す。

実証試験は静岡市内の集合住宅(16戸)で行う。都市ガスと水道のメーターに通信端末を取り付け、中部電の通信網を通じてデータを収集する。2022年12月までの2年間でデータの正確性や傾向、利活用できる分野などを検証する。

中部電は営業エリア内に約736万台(11月末時点)のスマートメーターを設置し、電気を使う一般顧客の7割をカバーしている。23年3月までに設置率をほぼ100%にする計画だ。一括検針のためのインフラは整いつつある。

検針業務の効率化につながる(取り付けたスマートメーターと通信機器)
まず期待されるのが検針業務の効率化だ。静岡市ではガスの検針は1カ月に1回、水道は2カ月に1回あり、検針員が1戸ずつメーターの値を記録している。スマートメーターを活用できれば検針に行く必要がなくなり、検針の時間短縮や省力化につながる。

1時間ごとに使用量が分かるのも利点だ。使用状況が従来より細かく分析できるようになるため、実証試験に参加する3者は新サービス創出や顧客満足度向上にもつながるとみている。

例えば、普段と使用状況が異なるときに知らせる「高齢者見守りサービス」だ。電気やガス、水道のデータが合わされば高い精度を実現できる。光熱費をまとめてチェックしたり、一括で支払ったりできるようになる可能性もある。「時間帯別料金の導入も視野に入る」(静岡市上下水道局)

災害時の対応もしやすくなる。停電などによる断水が起きた場合、これまでは利用者からの通報で状況を把握するしかなかった。使用量データがリアルタイムに得られるようになれば断水地区をすぐに特定でき、給水車の到着も早くなる。

本格導入されれば中部電はサービス手数料を得られる。同社はすでに各地のガス事業者との連携を進めている。

実用化に向けて課題もある。スマートメーターは高価で、水道の場合は一式で従来品の13倍かかるという。交換周期も8年と短い。「市内では33万個が必要。ならしても年間11億円近く毎年かかる」(静岡市)。得られたデータをもとに水道施設や水道管をダウンサイジング(規模縮小)するなど新たなコスト削減策が必要になる。

スマートメーターを活用する動きは活発になりつつある。県内では中部電などが18年度に浜松市で実証実験を行ったほか、21年度には湖西市でも水道事業の効率化に向けた共同研究が始まる。中部電は19年から愛知県豊橋市の住宅地で都市ガスと水道の自動検針を始めている。