徳武産業 靴にGPS 高齢者見守り 機能高め行動把握容易に

2020年12月08日日経新聞

 

介護靴大手の徳武産業(香川県さぬき市)が認知症の高齢者を見守る靴の新商品を発売した。全地球測位システム(GPS)搭載で高齢者の位置を特定できる靴で、2021年1月にはより精度の高い商品を売り出す。高齢者の増加で介護靴の市場は拡大していて、さらなる需要を取り込む。

徳武産業は18年秋から香川の自社工場でGPS機能を組み込んだ靴の製造を始めた。靴のサイズは23~27.5センチ、横幅も変えられる。色の種類は紫や黒、ピンクなど5色をそろえ、これまでに約800個の出荷実績がある。

新商品に搭載するGPS機器は直方体で、サイズは縦5センチ、横4センチ、奥行き1.2センチ。重さは25グラムと従来品に比べて5グラムほど軽い。1度の充電で5~9日間連続で使え、従来から性能が20~30%ほど改善したという。靴の厚底に埋め込み、振動を感知すると10分ごとに親族や介護事業者などに位置情報が通知される仕組みだ。販売価格は約1万5000円。新商品は関西の代理店にOEM(相手先ブランドによる生産)供給し、代理店などを通じて関西の個人や介護事業者に販売する。

新たな機能も設けた。靴の位置情報はメールなどで通知しているが、これまでは通知時点での位置情報しかわからなかった。新商品では10分ごとの居場所をブラウザ上の地図で見られるようになり、高齢者が移動する方向やスピードが予測しやすくなる。認知症の高齢者が1日に10~20キロメートルほど移動する場合もあるといい、常に移動する徘徊(はいかい)者を見つけやすくなる。

警察庁によると、19年度に約8万6000件の行方不明者の届け出があり、そのうち認知症が理由のものは約20%を占め、4年前に比べ5.2ポイント増えた。他社のサービスでは居場所がわかるアクセサリーなどがあるが、監視を嫌がる高齢者はアクセサリーを身に着けず、捨てられてしまう課題があった。西尾聖子社長は「認知症の程度によらず、外出時には高い確率で靴を履く。サービスが機能する可能性が高い」と話す。

高齢者向け靴の国内市場で徳武産業は商品数ベースで約5割、金額ベースで4割弱のシェアを持つとみられる。十河孝男会長は「10年代半ばまでは2桁増で成長していた。直近の5年間は(一般靴との境界があいまいになったこともあり)5%の成長率」と話す。同社は明るい色でデザイン性が良い靴を開発、ホームセンターやドラッグストア、百貨店などへの販路拡大に力を入れてきた。同社は1957年創業。従業員は約80人で21年7月期の売上高は前期比7%増の25億6000万円。中国の協力工場で自社ブランド「あゆみシューズ」を年150万足出荷する。