「同居の孤独死」538人 認知症で発見遅れ3割 都心と大阪市17~19年

2020年12月06日毎日新聞

 

 家族と同居していたのに、自宅で死亡してもすぐに発見されない「同居の孤独死」が、2017~19年の3年間に、東京23区と大阪市で計538人に上ったことが、毎日新聞の集計で判明した。大阪市では、同居者が認知症のため発見が遅れたケースが全体の3割に上った。高齢化が進行する中、全国で同様の事例が相次いでいるとみられる。専門家は、国や自治体が支援を強化する必要性を指摘している。

東京23区と大阪市などには監察医制度があり、遺体が病院外などで見つかり、警察が事件性が低いと判断した場合に、専門の医師が死因を調べる。福祉施策に生かすため、近年は孤立する高齢者らの状況についても調査している。

 大阪市内を管轄する大阪府監察医事務所は、病気などで自宅で死亡し、同居者がいるのに4日以上発見されなかったケースを「同居の孤独死」と定義。18年中の事例について初めて要因を含めて分析し、20年6月に近畿公衆衛生学会の学会誌に発表した。

 毎日新聞は、同事務所に19年まで3年分の調査を依頼。東京23区を管轄する東京都監察医務院にも大阪と同じ条件で調査してもらい、回答を集計した。

 大阪市で「同居の孤独死」は、17年24人▽18年35人▽19年31人――で計90人(男性58人、女性32人)。発見が遅れた要因は同居の家族が認知症のケースが最多の28人で、引きこもりや寝たきりのケースもあった。

 東京23区では、17年133人▽18年163人▽19年152人――で計448人(男性286人、女性162人)。23区では詳しい要因を分析していないが、統計を取り始めた03年(68人)の2倍以上になっており、高齢化に伴い増加が続いているとみられる。

 各地で同様の事例が起きているが全国的な調査はなく、詳しい実態は明らかになっていない。厚生労働省の担当者は「同居者がいると、見守りの対象から外れやすい。高齢化・核家族化で地域社会とのつながりが薄くなり、周囲の目が届かず孤立してしまう事例は今後も増えるだろう」と話している。

全国的な調査が必要

 藤森克彦・みずほ情報総研主席研究員の話 貴重なデータで、全国で同様の事例が起きていると考えられる。独居高齢者への支援は進んでいるが、同居者がいる場合の調査は不十分で、見落とされがちだ。特に現役世代の同居者がいる場合、周囲も「大丈夫だろう」と思ってしまう。引きこもりの50代の子を80代の親が養う「8050問題」といわれるような、親と同居する未婚の子供も増えており、「同居の孤独死」は今後さらに増加する可能性がある。国や自治体は全国的な調査を行い、問題が深刻化する前に、介護や福祉などのサービスにつながる仕組みを整備しなければならない。