新興各社 IoTで高齢者遠隔見守り、コロナ第2波に備え
2020年08月08日日経新聞
新型コロナウイルスの感染再拡大を受け、スタートアップ各社は高齢者の遠隔見守りサービスに力を入れる。あらゆるモノがネットにつながる「IoT」を使い、離れた場所から接触を避けて安否を確認できる。高齢者は新型コロナの重症化リスクが高い。人手不足と感染予防の両面で苦境に立たされている介護施設を支援する。
夜間に入居者の部屋を1時間に1回巡視していた頻度が大幅に減った」。介護施設のまごころ介護サービス(静岡市)は入居者の全部屋に赤外線センサーを設置した。施設内で暮らす高齢者らの活動状況がモニターに映り、介護士は離れた部屋から把握できる。
活用するのは親会社のインフィック(静岡市)が開発した見守りセンサー「ラシク」だ。手のひらサイズでベッドサイドに置くだけで、入居者の動きや、部屋の温度、湿度などが分かる。導入費用は1台1万9800円、月額利用料は980円と低価格に抑え、現在は介護施設などで約2000台が稼働する。
一人暮らしの高齢者の自宅にも設置を進めている。新型コロナの再拡大で県をまたぐ移動を自粛する動きが広がったため、離れた場所に住む家族の安否を確認したい人の需要に対応する。
介護現場は苦境に立たされている。これまで深刻な人手不足が指摘されるなか、新型コロナが直撃。北九州市や名古屋市の介護施設で集団感染が発生した。職員は限られた人員で対面の業務を減らしながら、入居者のケアをしなくてはならない。
海外勢も日本の介護問題に取り組む。米テラス・ユー・ケア(カリフォルニア州)は世界に先駆けて日本で遠隔見守りシステムの提供を始めた。壁に小型レーダー機器を設置し、転倒の有無や、心拍と呼吸の様子などが非接触で分かる。
ターニャ・コーク最高経営責任者(CEO)は「高齢化の進む日本は有力な市場だ」と話し、20年末までに3000台の導入を目指す。新型コロナに対応するため、センサーでせきを検知するアルゴリズムの開発も進めている。
介護サービスのウェルモ(東京・千代田)は今秋、送配電事業者の東京電力パワーグリッド(PG)と組んで電力の使用状況から高齢者を見守るサービスの実証実験を福岡市で始める。家電や照明の使用状況をリアルタイムで解析し、離れて暮らす家族や介護事業所と情報を共有する仕組みを構築する。
「新型コロナで直接家族に会うのが難しくなった人でも見守りができる」(ウェルモ)とし、早期の実用化を目指している。