乾電池型のIoT機器で見守りサービスを手軽に実現
2020年05月25日日経BP
さまざまな機器をインターネットに接続するIoT技術。その応用例の1つがネット接続した電気ポットやエアコンを使った見守りサービスだ。高齢者がそれらの家電をいつ、何回使ったかを離れた場所に住む家族がチェックし、元気で暮らしているかを見守る。
ただし、こうしたサービスの利用には見守り機能付きの電気ポットなどの購入や、専用センサーを壁に取り付ける工事などが必要だったりする。
ノバルス(東京・千代田)の岡部顕宏社長は、IoT家電をもっと手軽に利用できないかと考えた。
そこで開発したのが、単3電池型のIoT機器「MaBeee(マビー)」だ。単3電池の形をした容器に通信回路の基板を収めたもので、単4電池を入れると“通信できる電池”になる。
電池型で使い道が広い
例えば、テレビ用リモコンの電池代わりにマビーを使うと、リモコンが見守り機器になり、高齢者がいつ操作したかを家族がスマホ経由で把握できる。単3電池と同じ形なので、電動歯ブラシ、トイレの操作パネルなどにも幅広く利用できる。
マビー本体は1個当たり2980円、見守りサービスの利用料は月額980円。これがノバルスの主な収益源となる。ノバルスに出資するSOMPOホールディングス、中部電力などと開発する見守りサービスを通じて販売を伸ばす考えだ。資本提携はないが、ソフトバンクはマビーを使った見守りサービスを手がけている。これらの企業はノバルスの販売代理店のような役目を果たし、販売額をノバルスとシェアする。
マビーが多くの企業に注目される理由はいくつかありそうだ。まず、電池という誰でも知っている形状で、高齢者の自宅への導入が容易なこと。もう1つは、通信規格の更新に対応しやすいことだ。
テレビ、エアコン、水洗トイレといった家電・住宅設備は商品寿命が10年、20年と長い一方、スマホとリモコンを結ぶ「ブルートゥース」のような通信規格は1、2年単位で新しくなる。通信機能を家電や住宅設備に直接組み込むと通信規格が古くなって陳腐化しやすい。その点、マビーならば“電池交換”で最新規格に対応できる。デジタル技術による業務改革「デジタル・トランスフォーメーション(DX)」に対応したいさまざまな企業にとって、マビーは自社製品をデジタル対応させる便利な道具というわけだ。
標準になりやすい形状
岡部社長がマビーを電池の形にしたのにはヒントがあった。「パソコンならウィンドウズとインテルのCPU(中央演算処理装置)といった共通の土台ができて普及した。IoT機器はどういう形なら標準を目指せるかと考えて、乾電池の形にすることを発想した」という。
3月にSOMPOホールディングスと資本業務提携し、新型コロナウイルスの影響が広がる前に当面の資金調達はできている。今後は新たな用途の拡大にも挑む。