アップルウォッチで高齢者見守りアプリ 心拍数など送信

2020年04月29日朝日新聞

 

一人暮らしのお年寄りに腕時計型の端末「アップルウォッチ」をつけてもらい、心拍数が急変していないか、転んだりしていないかといった情報を家族と医師に知らせる。そんなアプリを八幡平市のソフトウェア企業「AP(エーピー) TECH(テック)」が開発した。

 アプリの名は「Hachi(チ)」。八幡平市の頭文字から名付けた。昨年秋から都内3カ所の病院で実証実験をしており、今年度からアプリの販売を予定している。
 お年寄りが持つアップルウォッチ、家族が持つスマホ、医師が持つiPadにアプリを入れると、次のような情報が共有される。

 普段は心拍数や歩数、睡眠時間などが1日100回以上、家族や医師側に送信され、健康状態を見守ることができる。緊急事態を知らせる機能もある。転倒など急な衝撃や、動いていないのに心拍数が急に上がったり下がった場合だ。

誤作動防止のため、お年寄りがアップルウォッチの画面を押す操作が必要になるが、位置情報も分かるという。アプリは医療機関や介護施設への販売を想定しており、いずれは個人への販売も予定している。

 Hachi誕生は、盛岡市出身でアップルコンピュータやシスコシステムズに勤めていた大西一朗社長(60)の経験がきっかけだ。父(88)が2013年夏、滝沢市の自宅の脱衣場で倒れ、母(85)が帰ってくるまで数時間、起き上がれなかった。都内にいた大西さんは「簡単にSOSが発信できれば」と思った。

 翌年、シスコシステムズを退社し、岩手に戻った。趣味のスキーで訪れた八幡平市がIT講座に力を入れていると知り、SOSアプリを開発できる人材がいるのではと19年、同市で会社を立ち上げた。役員や社員の中には医師が3人いる。

 Hachiには地域の健康を向上させたいという目的もある。市の講座で先生役を務めた谷津弘仁さん(34)の情報処理・提供サービス会社「データパイロット」がHachiを通じて収集した情報をデータベース化し、将来的には健康との関係を研究していくという。大西さんは「県内では脳疾患が多い。

例えば血圧や血糖値など、どういう条件がそろえば脳梗塞(こうそく)がどれぐらいの確率で発症するかデータを解析し、病気の予防につなげていければ」と話している。