【千葉】単身高齢者に安心と安全を届ける「あんしん電話」を考案‐堂垂伸治・どうたれ内科診療所院長に聞く◆Vol.2

2020年01月27日m3.com

  

――超高齢社会が進む中で、単身高齢者の孤立や孤独死がこれまで以上に問題になってきています。

 松戸市では自宅死のうち約3割が孤独死で、年々増加傾向にあります。なお、松戸市では孤独死を厳密に「一人暮らしで誰にも看取られずに居宅で亡くなった状態(40歳以上)」と定義しています。しかし、「自宅で死亡し死後2日以上経過した場合」を孤独死としている調査や報告もあり、統一された国の定義がまだありません。そのため、孤独死の実態が正確にはつかめていないのが現状ですが、人口49万人の松戸市では年間243人の孤独死が発生しており、これから推計すると全国では年間約6万人の孤独死があると考えられます。

――「あんしん電話」には、孤独死の増加を押し留める効果があるでしょうか。

 もちろん孤独死を防いだり、早期発見したりする一定の効果はありますが、それ以上に、一人暮らしの方が陥りがちな「孤立」「孤独感」をやわらげる効果が大きいと思います。緊急通報装置や、セキュリティ会社の高齢者向けサービスのような「監視型」ではなく、ゆるやかに人と人がつながることができる「対話型」であること。これが「あんしん電話」の最大の特徴で、地域での声かけ運動のツールにもなっています。「いつも自分のことを気にかけてくれる人がいる」という安心感の提供とともに、医療機関の敷居を低くして連絡をしやすくする。これは病状悪化を防ぐことにつながります。「体調不良」や「要連絡」の方へ具体的な指示や救急対応を行い、事なきを得た例もありました。

 さらに、やむなく突然死・孤独死した場合でも、「あんしん電話」利用者であれば1週間に1回電話連絡していますので、ご遺体は1週間前後で発見可能です。亡くなった後に腐乱したり白骨化したりして発見されるという「むごい事態」にはなりません。

――「あんしん電話」を運用してきて、課題に感じていることはありますか。

 当院に通院する患者さんで75歳以上の一人暮らしの方は185人います。実は現在、その6割以上が「あんしん電話」に参加しています。つまり、各地域の医療機関や介護事業所などがこのシステムを使えば、一人暮らしの方々の大規模な捕縛・把握が可能になります。

 単身高齢者の人数に関しては国勢調査で初めて全数把握できるのですが、現場で見守るための抽出・把握が大変難しいのが現状です。一人暮らしの方が自ら手挙げしないと、地域での見守り活動の対象者になり得ないからです。その点、医療機関や介護事業所などがピックアップすれば見守りの対象者数は大幅に増加します。その際に「あんしん電話」は、単身高齢者の見守り活動に役立つ実践的なツールとなります。

 しかし、「あんしん電話」の導入はなかなか進みません。地域包括ケアの一環として、単身高齢者の管理ツールの利用という観点で診療報酬加算を設けるなど、国が認知症施策と同様に“上から推進”してくれればもっと動くとは思うのですが。

 一方で、これまで「あんしん電話」を推進してきた地域の住民組織のメンバーの高齢化や後継者不足で、新陳代謝が進んでいないという課題もあります。また、市からの予算が少ないこともあり、事業として採算を成り立たせるのに苦労している状況です。

 高齢者の見守り活動は、地域で自治会などの住民組織や民生委員などを中心にやってきましたが、ボランティアでは限界があります。今後、地域の一般住民だけでなく、医療・介護・福祉関係者が「地域を守る」という意識でさらに積極的に動く必要があると感じています。「あんしん電話」を各地域でより多くの施設が導入し、活用してもらえれば。地域包括支援センターなどにも、地域の見守りステーションとしてこのシステムを活用してもらえれば理想的です。

――医療機関がこうした見守りの役割を積極的に持つことが重要になってくるのですね。

 一人暮らしの高齢者の方々に対して、医療機関がちょっとした手助けができる「あんしん電話」のしくみは、こちら側にはさほど労力がかからず、そのわりには利用者が安心を感じ喜んでいただける。これまで運用してきて、そのことを私は実感しています。

 利用者の応答結果一覧のチェックは、事務員が日々の業務の合間に行うことが可能なので、専用の人員を置くといった必要はありません。医療介入が必要な方がいたら私に報告が上がってきますので、その場合は患者さんに受診を勧めたり、看護師に点滴に行ってもらったりします。もちろん、かかりつけの医療機関があればそちらの受診を勧めています。受診や往診がある場合は費用をいただくわけだし、電話代くらいはサービスとして医療機関持ちでも何とか成り立つわけです。

 実際、一人暮らしの高齢者の方が何か困ったときに、じゃあ近くの民生委員の世話になろうと自発的に出ていけるかというと、プライドやプライバシーなどの問題もあり、なかなか難しいようです。もともと地域での関係性が薄い中では、個別に「助けてくれ」とは言いづらい。その点からも医療機関は適当で、頼られやすく頼りがいがあるのです。

――今後、「あんしん電話」のシステムはどうなっていったらよいと思いますか。

 「あんしん電話」は固定電話だけでなく、携帯電話・スマートフォンでも利用可能です。今後の世代のことを考えれば、スマートフォンでのSNSの活用が主流になるのかなと思っています。LINEなどは相手がメッセージを見たかどうかが「既読」の印で分かるので便利ですね。ただ、「既読」の確認や応答内容を個別に見ていくのは大変なので、管理者が結果を一覧できるようなシステムがほしいところ。現場が使いやすいツールかどうかの感覚が重要です。今後、単身高齢者だけでなく、引きこもりなど、社会からの孤立は大きな問題になっていきます。「地域をつなぐ」シンプルなシステムが必要だと思っています。