【千葉】単身高齢者に安心と安全を届ける「あんしん電話」を考案‐堂垂伸治・どうたれ内科診療所院長に聞く◆Vol.1

2020年01月20日m3.com

  

 松戸市では常盤平団地で孤独死が大きな話題となったことがあり、これに触発された住民組織と地域の医療・介護機関が連携し、自動応答電話「あんしん電話」による高齢者の見守り活動を行っている。市内800世帯以上が加入する「あんしん電話」の仕組みについて、システム考案・開発に携わった、どうたれ内科診療所院長の堂垂伸治氏に聞いた。

――松戸市の「あんしん電話」は、もともとは、どうたれ内科診療所の高齢患者のフォローのために考案・開発したものが始まりなのですか。

 2000年代前半、松戸市の常盤平団地の孤独死が大きく報道され、全市的な孤独死対策を行う「まつど孤独死予防センター」ができました。現在は、高齢世帯の3分の1、当院通院患者さんでは75歳以上の方の4人に1人が単身者です。男性は女性に比べて地域とのつながりが薄くて孤立しやすく、孤独死も男性が圧倒的に多い。当院ではそういった方々を診察し、サポートが必要となっていく姿をずっと診てきて、なんとかできないものかと思ってきました。

 また、私自身が独身だった30代後半に「一人暮らしはけっこう孤独なものだ」と身をもって実感したことがありました。これが私の活動の原点かもしれません。孤独を感じたときには、古くからの友人を訪ねたり、気を紛らしたりしていました。こうした経験もあり、肉親以外で「頼れる人間関係を持っていること」が、一人暮らしの方に役立つだろうと考えたのです。とはいえ、診療所の業務は多忙なので、患者さんに個別に対応していくことはなかなか難しい。ツールとして「あなたを心配している、見守っている人がいますよ」というものがあればいいなと考えました。

――日ごろの診療や、ご自身の一人暮らしの経験での実感がきっかけとなったのですね。

 はい。その後、知人を通じて工学院大学の教授と出会い、同研究室の研究者に「パソコンから定期的に自動で電話をかけて安否を確認する」というアイデアを形にしていただきました。当院での試行実験では十分な成果が得られました。しかし、大学の研究としては資金の関係もあり、2年間で終了します。すでにサービスは開始され利用者もいるのに、急にやめるというわけにはいかない。そこで別の人脈をたどり、IT関係の会社が開発を引き継いでくれて、現システムの「あんしん電話」を製作できました。

 現在、「あんしん電話」のシステムは、松戸市内では地域で連携した「見守りステーション」として7カ所で使用され、全国でも15カ所ほどで稼働しています。

――「あんしん電話」のしくみは、どのようなものですか。

 「あんしん電話」自体はサーバー機能を持ったものです。既存の光回線と操作用のパソコンで動作し、設定はすべてパソコン上の画面で行います。システムを立ち上げログインすると、管理者用のメインメニューから登録した利用者の管理、応答結果の一覧表示、集計結果表示などの各種機能が利用できます。

 同意を得た利用者ごとに希望した曜日と時間をあらかじめ設定しておけば、週1回、設定日時に利用者宅に自動的に電話がかかります。利用者は受話器を取った後に流れるメッセージに従って受話器のプッシュボタンを操作します。1は「問題なし」、2は「体調不良」、3は「要連絡」として、利用者の応答結果はパソコン画面に一覧として表示されるので、対応の必要がある人が一目で分かります。

――とてもシンプルで分かりやすいですね。

 そうですね。発信元(医療機関など)にとっては管理を自動化できて負担が少なく、利用者にとっては気兼ねせず「安心」を手に入れることができます。費用も電話料金と回線使用料だけで済み、バランスがとれたシステムだと思っています。

 一人暮らしで心配な方に対して、医療機関が訪問したり直接電話をかけたりして安否を確認するのは手間と労力がかかるし、時間もかかってしまいます。その点、「あんしん電話」は一度設定すれば、あとは自動なので医療機関側の負担が少なく済みます。利用者もかかってきた電話を取ってメッセージに従ってボタンを押すだけなので、心理的負担が少なく気楽です。もしこの問い合わせが発信元の人間自身からだとすると、かえって申し訳ない気がして利用しづらいと思われてしまうかもしれません。現在10年以上継続している利用者の方もいますが、この「淡い関係」だからこそ続いてきたと思っています。
――「あんしん電話」による地域の見守り活動について教えてください。

 松戸市では、高齢世帯や単身高齢者、地域の住民組織(町会・自治会、民生委員など)、見守りステーション(医療機関など)の三者が、「あんしん電話」のシステムを活用して互いに安否を知らせ合うことで、地域での見守り活動を展開しています。松戸市も「あんしん電話」の申し込みを受け付け、松戸市医師会も後援しています。

 電話への応答が「体調不良」や「要連絡」の方へは、見守りステーションとなっている医療機関などがまず電話して確認。その状況に応じて、見守りステーションが地域の住民組織やボランティアの方に連絡し、適宜、高齢者宅を訪問するなどの対応を行っています。登録時の申し込み用紙に緊急時の連絡先を書いてもらっているので、そちらに連絡することもあります。場合によっては看護師が駆けつけることもあります。なお、電話が話し中の状態や応答がなかったときは、翌日の同じ時間に自動的にかけ直すように設定されています。

 この10年、「あんしん電話」システムの基本構造は変わっていません。もちろん松戸市では、地域包括支援センターを中心とした地域包括ケア体制の構築も進んでおり、医療・介護・福祉・行政の連携が次第に充実してきています。


◆堂垂 伸治(どうたれ・しんじ)氏

1975年東京大学工学部航空学科卒業。1985年千葉大学医学部卒業。社会保険城東病院、千葉県救急医療センターなどを経て、1990年千葉西総合病院内科・循環器科医長および地域医療部長。1999年よりどうたれ内科診療所を開業、現在に至る。千葉大学医学部臨床教授、常盤平地区地域ケア会議専門部会委員、松戸市医師会在宅ケア委員会委員。