日立アプライアンス、高齢者向け見守りサービス「ドシテル」を2019年4月から開始
2018年11月22日家電Watch
日立コンシューマ・マーケティングおよび日立アプライアンスは、スマートライフ事業の第1弾として、単身高齢者向け見守りサービス「ドシテル」を、2019年4月から開始する。
離れて暮らす単身高齢者の家のリビングに、専用の活動センサーを設置。プライバシーを守りながら、リビング内での動きを捉え、家族がスマートフォンで様子や変化を確認できる。
日立コンシューマ・マーケティングと日立アプライアンスは、2019年4月に統合を予定しており、今回のサービスは、生活ソリューションカンパニーを目指す新会社が「第二の柱」とする「ソリューション事業の創生」において取り組む、スマートライフ事業の第1弾となる。
日立アプライアンス チーフ・デジタル・オフィサー兼事業戦略統括本部長の鹿志村 香取締役は、「まずは小さくスタートし、利用者の要望を反映しながらサービスを進化させ、事業を拡大していくことになる。このサービスを第1弾として、スマートライフ事業の立ち上げにつなげていきたい」と意気込む。
サービス開始の4カ月以上前に内容を発表するのも同社の家電事業では異例のことだが、「新サービスの知名度を高めるとともに、2019年2月には、関東近郊の単身高齢者および家族を対象に10人程度で先行サービスを開始し、意見を反映しながら、改善を続けるのが狙い」(日立アプライアンス 事業戦略統括本部デジタルイノベーション推進本部長兼CTO兼CLOの笹尾 桂史執行役員)としている。
ドシテルの名称は、「家族が寄り添っている様子をイメージし、家族から見た気持ちを込めたもの」と、笹尾執行役員は語る。
日立製作所が、2017年4月に設置した未来投資本部で開発を続けてきた高齢者見守りサービスをベースに、2017年秋以降、家族向けサービスとして、日立アプライアンスで事業化に向けた検討を開始。単身高齢者世帯などを個別に訪問して得られた実態や意見を反映し、今回の製品化につなげた。
鹿志村取締役は、「単身で生活をするアクティブシニアは、元気に生活ができているので子供に迷惑をかけたくないという気持ちがありながらも、なにかあった時の心配や不安があることが伺われた。しかも、不安があることを家族にはいいたくないという気持ちもあることがわかった。一方で、離れて暮らす家族にとっては、心配で仕方がないが、生活にはあまり立ち入ってはいけないという気持ちがある。こうした双方の微妙な気持ちを察して、『ゆるく』見守るサービスとして提供することにした」と語る。
鹿志村取締役は、2018年3月まで未来投資本部で、ベースとなるサービスの開発に従事。自らが事業化まで手掛けることになった。
ドシテル」のサービス概要
ドシテルでは、小さな弁当箱サイズの活動センサーを、リビングの高い位置に設置。在室状況や活動量を測り、それを離れて暮らす家族が、スマートフォン上でリアルタイムに知ることができる。静止画や動画を撮影するカメラを使わずに、活動センサーを使用することから、プライバシーを保つ形で活動状況などを知ることができるようにしたのが特徴だ。
活動センサーから収集したデータは、宅内のWi-Fiルーターからインターネットを通じて、日立グループ会社のサーバーに蓄積。「外部からの不正アクセス防止などを行い、厳密なセキュリティ管理を行う」(鹿志村取締役)という。
スマートフォンの専用アプリには、リビングにおける一日の活動量のほか、リビングの不在時間から逆算した外出時間や睡眠時間、生活リズムの変化などを表示。家族は、それを見て、安定した生活を送っていることを確認したり、変化にも気がつきやすいようにした。
「夜間の睡眠時間が少なかったり、昼間に寝ている時間が多いことが分かれば、生活のリズムが崩れていることを知り、家族が手助けするきっかけになる。また、長期間にわたってデータを蓄積すれば、徐々に動きが少なくなっていることなども理解できるようになる。膝や腰が痛くて動きが少なくなったのではないかといった推測も可能になる」(笹尾執行役員)としたほか、「電話をしたいと思ったときにも、リビングにいることをスマホで確認してから電話すれば、つながりやすいといった、気軽な用途で利用してもらうこともできる」(鹿志村取締役)とする。
家族は、活動量などの状況をリアルタイムで確認できるが、不在状況や静止状態が一定時間経過した場合には、家族のスマホに、プッシュ型の情報配信で状況を伝える。
活動センサーの価格や据え付け料金などの初期費用、サービスを利用するための月額料金はサービス開始直前に発表される予定だが、「無理なく支払っていただける料金設定を予定している」(笹尾執行役員)という。
販売ルートについても現時点では未定としているが、最適な場所への活動センサーの設置や、ネットワーク設定などが必要なことから、同社による直販のほか、地域販売店である日立チェーンストール店などでの販売が検討されている模様だ。
「サービスの提供に関しては、保険会社をはじめとする様々な企業や、自治体などの連携の可能性もあるだろう。BtoBtoCによる提案ができるサービスであり、機会があれば、様々な企業との連携を図っていきたい」(鹿志村取締役)としている。
現時点では、リビングだけの情報を収集するものになっているが、「ほかの部屋にも活動センサーを設置したほうがいいという要望があれば、設置場所を増やしたり、家電製品に搭載されているセンサーと連動をしたりといったことも検討していくことになる。利用者の声を反映しながら、価値の高いサービスへと進化させたい」(笹尾執行役員)と語る。
一方で、鹿志村取締役は、「今回のドシテルによってスタートするスマートライフ事業は、これまでに経験がないサービスを創出するものになる。洗濯機をはじめとするコネクテッド家電やロボット掃除機、コミュニケーションロボットなどとの連動なども視野に入れながら、生活の悩みごとを解決し、ひとりひとりにうれしい暮らしを提供する『360°ハピネス』の実現につなげたい。スマートライフ事業においては、今回の単身高齢者見守りサービスに続き、二の矢、三の矢を打っていきたい」と述べた。