単身の高齢者 ITで見守る
2018年11月14日読売新聞
単身で暮らす高齢者が増える中、遠方に住む家族が、異変がないか把握できる見守りサービスのニーズが高まっている。情報技術(IT)を使い、日常生活を緩やかに見守る商品も登場している。
堺市の団地で1人暮らしをする井上恵美子さん(74)宅の冷蔵庫ドアには、小さなカード状のセンサーが取り付けられている。開閉時の振動を感知し、離れて暮らす長男(47)にLINEでメッセージが届く仕組みだ。24時間、反応がない時にも通知される。井上さんは「心臓に持病があり、万一の時、家族に気づいてもらえるのは安心」と話す。
団地を管理する大阪府住宅供給公社などが8月に始めたIoT(モノのインターネット)による見守りの実証実験で、65歳以上の単身者が主な対象。実用化すれば、装置代と5年間の通信料込みで1万円程度で利用できる見込みだという。公社の職員が年2回訪問して緊急連絡先などを聞き取るサービスも併せ、担当者は「安否をすぐに確認できる態勢をつくり、高齢者の生活を支えたい」とする。
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内閣府の高齢社会白書によると、65歳以上の人がいる世帯は2016年に2417万世帯あり、全世帯のほぼ半数を占める。1人暮らしの高齢者世帯は656万世帯と、1980年の7.2倍に増加。こうした背景を受け、見守りサービスが広がっている。
手軽なのは、家電にセンサーなどを取り付け、使用すると家族に連絡がいく方式だ。普段と様子が違ったり、長時間使われていなかったりした場合など、異変の可能性を察知できる。
東京電力エナジーパートナーの「遠くても安心プラン」(月額2980円税抜き)は、分電盤に専用機器を設置し、エアコンやテレビなど家電ごとの使用状況を家族のスマートフォンに通知する。関西電力や九州電力も、電気使用量が普段と大きく異なった場合にメールで知らせるサービスを提供している。
無線通信機を内蔵し、使用状況を知らせてくれる象印マホービンの電気ポットは、2001年のスタートからの累計で1万人以上が利用。ネスレ日本も昨年、コーヒーマシンを使うと家族に通知が届くサービスを始めた。
高齢者宅を直接訪問して安否確認する取り組みもある。日本郵便が昨年10月に始めた「みまもり訪問サービス」(同2500円税抜き)は、社員らが月1回、高齢者宅で体調や心配事など10項目を質問し、家族に回答を報告する。今年9月時点で約110自治体が、ふるさと納税の返礼品として取り入れている。
ボタンを押すと緊急通報できる機器を設置したり、訪問事業を行ったりしている自治体などもあるので、確認してみるとよい。
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高齢者が見守りを「監視」ととらえ、負担に感じることのないようにしたい。みずほ情報総研(東京)チーフコンサルタントの羽田圭子さんは「利用にあたっては、どのようなサービスなら抵抗感がないか、いつ始めるかなどを家族間でしっかり話し合うことが必要」と指摘する。
一方で、ちょっとした異変にも気づいてもらえるよう、普段から近隣住民と良好な関係も築いておきたい。羽田さんは「高齢者の孤立防止には周囲の力が不可欠。人と機器の見守りを組み合わせることが有効だろう」と話す。