非接触型バイタルセンサーシステムで、 “心身の見える化”を実現!

2018年11月12日DREAM GATE


非接触・無拘束型の生体検知システムの開発・製造を行っている株式会社カレアコーポレーション。マイクロ波ドップラセンサーを用いて、人体に触れることなく、脈拍、呼吸、体動を同時に検知できるシステムの製品化に成功した。同システムの最大の特徴は、身体の変調だけでなく、心の変化を可視化できる点にある。

心のバランスは自律神経によって司られている。同社は自律神経と脈拍の関係性に着目。脈拍の揺らぎ解析により、眠気、疲労度、集中度、ストレス度を計測することで“心の見える化”を実現している。これにより、うつやパニック障害、認知症などの早期発見にもつながる。

また、同システムは、安否確認や離床検知、徘徊検知、転倒検知、トイレ・浴室内の異常検知など、さまざまな見守りサービスに対応。介護現場の状況に応じて、自由にカスタマイズ可能だ。

同社は、大阪大学との共同研究を行うことで、世界で初めて毛細血管画像の数値化に成功。目下、同システムの最大の導入メリットは、高齢者に負担をかけることなく見守れること。

介護施設に設置されたカメラは、犯罪抑止や手厚い見守りとして有用なツールである一方、プライバシーの侵害や入居者にストレスを感じさせるという問題がある。そうしたなか、同システムを導入すれば、入居者のプライバシーを保持したまま心身の状態をモニタリングできると同時に、介護スタッフの負担も軽減できるのだ。

バイタルデータの検知距離は最大5メートル。マイクロ派を用いているため、壁や窓ガラスなどの障害物があっても検知可能だ。耐環境性に優れており、湯気が立ち込める浴室や騒音の激しい工場、気圧の高い酸素カプセルなどでも使用できる。また、富山大学と共同開発のNHA(非調和解析)技術を導入。振動・衝撃ノイズを除去することで、高精度の検知を実現している。

ターゲットとなる市場は、介護・福祉サービスをはじめ、住宅用設備、オフィス機器、セキュリティサービス、メンタルヘルスケア、家電、自動車、ゲームなど多岐に渡り、それらを合わせると市場規模はおよそ100兆円とも予測されている。

具体的には、空調や照明、音響などの居住空間の快適制御、ドライバーの居眠り検知、社員のメンタルヘルスケア、ゲーム依存度検知、熱中症やヒートショックの検知、睡眠品質の検知など、幅広い分野に展開可能だ。その応用領域の広さから、大手企業からの引き合いも多く、現在、複数の企業と製品化に向けて話し合いを進めているところだという。

また、“心身の見える化”という特性を活かし、高齢者のみならず、乳幼児や障害者など、言葉によるコミュニケーションが困難な人向けの見守りシステムとしての応用も期待されている。

同社代表の吉田一雄氏は、大学卒業後、パナソニックの共栄会社である立山化学グループに入社。企画・開発担当として30年、副社長として10年勤務し、独居高齢者向け「緊急通報システム」を全国150自治体に導入した実績を持つ人物だ。

そんな吉田氏は現在64歳。「人生の結末をどう締めくくるか」と考え抜いた末、「後悔のない人生に!」と一念発起。「今までの経験と開発ノウハウを活かし、社会に恩返しをするべき」という使命感に突き動かされ、2014年4月に起業した。

その後、複数の介護施設を訪問するなかで、寂しそうに食事をする入居者の姿を目の当たりにし、「人間としての尊厳を損なうことなく、その人らしい生活をサポートするシステムを提供したい」という思いが強まっていったという。

2014年11月には、富山県新世紀産業機構「とやま起業未来塾」にて最優秀賞を受賞。これを機に徐々に認知を拡大してきた。現在、システムの高精度化を目指し、富山大学にて実証実験を実施中。2019年春には、喜怒哀楽などの感情検知機能の実装化を目指す。

「今後は、心と身体の変化を検知することで、離床、転倒、徘徊、眠りの質などを予測する製品開発を行いたいと考えています。将来的には、人とセンサーの連携により、介護の質を低下させることなく、人的負担を軽減することで、すべての人が自宅で幸せな最期を迎えられる世界を実現することが私たちの願いです」