IoTで見守り データから異変を家族のスマホへ

2018年10月24日毎日新聞


 あらゆるモノをインターネットでつなぐ「IoT」を活用し、高齢者を見守ろうとする実験が高松市で進んでいる。生活の異変を離れて暮らす家族などへ即座に知らせる仕組みの構築を目指しており、来年度にも実用化したい考えだ。

 実験に臨んでいるのは高松市や香川高専、民間企業2社でつくる「スマートシティたかまつ推進協議会」。総務省のIoT支援事業に採択され、今月14日から始まった。

 市によると地域全体で高齢化が進行していることに伴い、見守り活動を担う人も減少傾向にある。家々を回って安否を確認する活動への負担を軽減しつつ、一人暮らしの高齢者などの異変に即座に気づくことができないかと、情報技術分野の力を借りることにした。

 実用化に向けてまず必要になるのが、行動パターンと、身体機能に関する情報だ。食事やトイレ、睡眠時などで高齢者の心拍数や体温、呼吸回数はどう変化するのかといったデータを大量に蓄積し、100項目で指標化する。

 実用化された場合は、AI(人工知能)が利用者の実際の生活に最も近いデータを選び、常時計測する心拍数などでデータにそぐわない異常な数値が示された場合はスマートフォンなどを通じて家族に警報として知らせる仕組みだ。利用者の情報は匿名化し、市の共通プラットフォームで共有・保管。見守る側は情報共有アプリを使い、安否を常時確認することもできる。

 15日には高松市鶴市町にある特別養護老人ホーム「エデンの丘」で、80代~90代の利用者12人がデータ採取に協力。呼吸や体温などを感知するセンサーが取り付けられたベストを着用し、推進協議会のメンバーらが専用機器を使ってさまざまなデータを記録していた。

 実験に協力した女性利用者(85)は「何かあった場合に誰か来てくれるなら安心」。別の利用者の女性(92)も「家族の留守中など一人になった時に心強くなる」と話していた。市長寿福祉課は「高齢者が安心して暮らせ、地域の見守りも楽になるような仕組みを実現させたい」としている。