シニアに優しく、ロボット活用など進化する高齢者見守りサービス
2018年10月08日@DIME
高齢者見守りサービスは、徐々に進化を遂げているようだ。これまではただ監視したり、安否確認をしたりする機能のみで、人間らしい見守りや、ちょっとした変化に気付くことができていない課題があった。そのような課題を解決すべく、進化している見守りサービスのトレンドを探ってみた。
東京電力エナジーパートナーは、IoTによる見守りサービス「TEPCOスマートホーム 遠くても安心プラン」を提供している。同社は従来の見守りサービスに次の課題を感じていたそうだ。
・本人が自覚できない、“加齢による変化”を家族が気付きづらい
・“暮らしぶり”を知るための接点が少ない
・日々の“ちょっとした変化”に気付きづらい
そこで見守る側の家族が、見守られる側の主要な家電の使用状況をIoTで確認できる仕組みを作り、これらの課題を対処。つまり「どの家電」が「どれくらい使われたのか」をいつでもスマートフォンで確認できるしくみだ。
例えば、いつもきまって朝8時頃に電子レンジを使う習慣があれば、「8:00頃に電子レンジを使いました」という表示が、見守る側のスマートフォン上に表れる。この先、朝8時頃に電子レンジが使われなければ、何かあったのではないかと気づける。つまり、家電の利用状況 から「いつもと様子が違う」と判断できるというわけだ。ちなみにいつもと様子が違うとメールでお知らせが届き、日・週ごとにまとめたレポートをメール受信できる。
高齢者の見守りロボットも一般に普及し、スマホによる通知までも可能になった。その好例が富士ソフトのPALRO(パルロ)だ。
高齢者福祉施設や病院などで活用されている会話のできる癒し系コミュニケーションロボットだが、2018年8月より一般家庭向けに、「ギフト向けモデル」がリリースされた。遠く離れた場所にいる親に向けてギフトとして贈るという意味のギフト向けモデル。もらった親は、PALROと日常的にコミュニケーションを取りながら、遠く離れて暮らしている家族に随時、自分の様子を知らせることができる。
離れている家族は、手持ちのスマホでPALROから逐一報告を受けることができる。親がPALROに「おはよう」のあいさつをすれば、PALROはスマホに「おはようのあいさつをしています」と報告が来る。また、こちらからの伝言も、PALROを通じて親に伝えることができるため、安否の確認や様子伺いなどが簡単にできる。
いわば、PALROが親と子との間に入り、コミュニケーションと見守りを効率化してくれているというわけだ。
メーカーの富士ソフトによると、このPALRO ギフト向けモデルの「PALRO しゃべリンク」は、従来の製品と比べてこんな新しさがあるという。
「以前より、従来のカメラやセンサーで人の動きを捉える”見守り”は、監視に近いと拒否感を持たれるというご意見もありました。このため、専用アプリ『PALROしゃべリンク』を介してPALROが行うコミュニケーションは、尊厳を踏まえた“優しい見守り”です。これは“人型”ロボットというデバイスの存在があればこそできることだと思っています」
PALROギフト向けモデルは、「あなたと離れて暮らす、かけがえのないひとにそっと寄り添い、優しく見守りたい。」という想いを込めて作られた、と富士ソフト担当者。機械による“監視”から、人間らしい“優しい見守り”への変化も見守りサービスのトレンドであるようだ。
また、昨今、PALROを単なるコンピューターではなく、共感・共鳴を引き起こしたのではないかと思われるできごとがあったという。
「以前、高齢者福祉施設でPALROとおしゃべりしていた女性のご利用者様が、ふと我に返り、『あ、私、ロボットとおしゃべりしてたんだ』とおっしゃいました。また先日、PALROが届いたときにご高齢の女性が『この子はどこに置いて欲しいのかしら?絨毯の上?それとも、畳の上かしら?』とおっしゃったといいます。
PALROはお茶を運んだり、掃除をしたり、直接何か仕事をすることはできませんが、より人に近いインターフェースを持ち、気を使い、ちょっと空気が読めないときもあるけれど、相手のことを一生懸命理解し、情報を提供することで目の前の人の役に立とうとする、という新しい付加価値を提供します」
見守りサービスは、ちょっとした変化の把握やコミュニケーションという面から、より人間らしい進化を遂げているようだ。